こんにちは、未来像{HOPE}をつくる専門会社 未来予報株式会社のソガです。今日は、未来を考える時に使われる一般的なツールの説明から、私たちが普段愛用しているひみつ道具までをご紹介します。
「未来について思索を巡らせる」ことは、もはやビジネスの領域における未来洞察だけでなく、私たち一人一人が身につけるべき重要なスキルになっています。気候変動、テクノロジーの進化、社会構造の変化など、私たちを取り巻く環境は急速に変化しており、予測不能な将来に向けた準備と適応力が求められています。特に、次世代を担う子供たちにとって、未来を道具のように使いこなす力であるFutures Literacyは、これまで以上に重要なスキルとなるでしょう。
本記事で紹介する5つの手法とツールは、企業の戦略立案だけでなく、教育現場や市民が未来思考になるためにも活用できる実践的なアプローチです。これらの手法は、複雑に見えて実は直感的で分かりやすく、年齢や経験を問わず活用できることが特徴です。未来を「予測する」というより、むしろ「探索する」「予報する」ための道具として捉えることで、より創造的な未来への準備が可能になります。
未来予測の手法は、大きく分けて2つのアプローチがあります
①専門家の知見を活用するアプローチ
②自分たちで情報を収集・分析して構想するアプローチ
本記事では、主に②の自分たちで実践できる手法に焦点を当てて解説します。
💡 大切なポイント:未来を「当てる」ことが目的ではありません。
様々な可能性を考えることで、変化に対応できる力を身につけることが重要です。
変化の兆しを集めて可視化する – Scanning
未来に向けた変化からまだ小さな変化の兆しを見つけて整理をする方法です。
例えば、統計から見出される人口の未来予測や、技術ロードマップと呼ばれるような未来予測にとどまらず、一部の人だけが使い始めた新しいアプリや、海外で話題になり始めたサービスなどに注目して、トレンドを整理していきます。一般的に未来洞察では「Scanning(スキャニング)」と呼ばれています。博報堂生活総研の「未来年表」や、ガートナーの「HypeCycle」、行政機関やシンクタンクが定期的に発行する「技術ロードマップ」など、さまざまなスキャニングの種を手にいれることができます。
私たち未来予報(株)では、社会の変化(人口動態等の行政が発表する未来予測)と、技術の変化(業界団体が作る技術目標の未来予測)とは別に、暮らしの未来予報(先進事例から考えられる未来の兆し)をまとめてデータベースにしています。
「未来予報データベース」についての詳細はコチラからご覧ください。
ある{かもしれない}未来の仮説をつくる – What if
まとめたトレンドや未来年表から、自分なりの未来の仮説を思い浮かべていきます。これには様々なやり方がありますが、未来洞察の中では着目した兆しの影響を視野を広げながら考えられるフレームワーク「Future Wheel」や、「What If〜(もし…⚪︎⚪︎ならば)構文」が、使われることが多いと言えるでしょう。
Future Wheelは、1971年に未来学者Jerome C. Glennが開発したフレームワークです。中心となる輪に注目した兆しを置いて、その周囲に「一次的(直接的な)影響」「二次的(間接的な)影響」」「三次的影響」と発想の輪を広げていく手法です。この時には「What If〜(もし…⚪︎⚪︎ならば)」という問いが繰り返し行われていきます。 この問いを繰り返すことで、気づかなかった社会の変化や影響に目を向けることができ、視野を広げながら自分なりの未来の仮説をたてることができます。
私たちも「What If〜(もし…⚪︎⚪︎ならば)」を繰り返しながら、毎日未来の予報を作っています!なかなか発想が広がらない時は、カードゲーム「未来のおだい」を活用しながら、ある{かもしれない}未来の兆しを、強制発想で作るようにしています。
未来の可能性を俯瞰で分析しのぞましい未来を描く – Visioning
ここまで来ると、様々なある{かもしれない}未来が思い浮かんできます。誰もがすぐに理解・共感してくれそうな世界から、ありえない!と思われる世界も出てくると思います。それらの未来の仮説を俯瞰で見渡して分析した上で、「自分が欲しい=のぞましい(Preferable)な未来」を考えるVisioningのためのツールが「Futures Cone」です。
ここで定めた未来を、未来像{HOPE}へと作り上げていきます。
円錐の真ん中から整理すると
・おこるだろう未来:Probable
→ 誰もが納得できる未来予測
・おきてもおかしくない未来:Plausible
→ 説明を聞けばほぼ誰もが納得できる未来
・おきる{かもしれない}未来:Possible
→ 未来に想像力を膨らませるとあるかもと思える未来
そして、ここに
・のぞましい未来:Preferable
→"自分が"のぞましい、欲しいと思える未来
を追加していく流れとなります。
なかなか突然「どんな未来が欲しいのか?」と聞かれても困ってしまうので、視野を広げながら自分なり/自分たちなりの欲しい未来を考えていくことができる便利なツールですね。しかし未来洞察の議論を白熱させたり、ときにはチームの頭を悩ます瞬間を生み出すこともあるのです…。
自分と向き合い、多様な意見を盛り込みながら「のぞましさ未来」を作っていくことは、とても楽しく、難しい作業でもあります。この望遠鏡から伸びたアイスクリームのような形状(コーン)が可愛らしい割に、いろいろと考えさせる奴なんです。
私たちが発信する「未来予報」は、視野を広げてもらうのが目的です。
そのため「おこる{かもしれない}:Possible」の部分の外側を目指して作っています。
「ありえない!」と「おこる{かもしれない}」のギリギリラインが、現在のあたり前を疑わせてくれる”ユニークな未来予報”になるのです。
そして何より、どこらへんが「自分が欲しい=のぞましい(Preferable)」未来なのか?それを選ぶのは、あなた自身以外には不可能なのです。
ここを発見していく胆力こそ、Futures Literacyの根本であると言っても過言ではないでしょう。
未来のストーリーをつくる – Scenario Planning
未来像を検討したり、その未来に生きる未来人像を検討する時には、シナリオやストーリーにするのが有効です。
その手法の一つ「シナリオプランニング」は、未来の不確実性を乗り越え、複数のシナリオを通じて未来の可能性を広く探索する一般的な手法と言われています。分析や深堀りやストーリーの作り方などなど…手法は様々ありますが、ここでは「軸に分けたマトリクス」で発想してみましょう。
「未来像」や「未来人像」を軸を使って4つのタイプに分類して発想することで、未来の多様なシナリオを描き出すことができるのです。
わかりやすい例だと、悲観的⇄楽観的、技術浸透度高い⇄技術浸透度低い…などは典型的な考えやすい4つの軸だと思います。
悲観的 × 技術浸透度高い シナリオ名:「テクノロジー支配と社会分断」 高度な技術は普及するが、社会が適応できず、格差と監視社会が広がる。 | 楽観的 × 技術浸透度高い シナリオ名:「テクノロジーと共に築く持続可能な未来」 技術革新が社会に浸透し、持続可能な社会システムが確立され、生活水準向上。 |
悲観的 × 技術浸透度低い シナリオ名:「停滞と不安定な未来」 技術革新は遅れ、社会は経済的、環境的問題に苦しみ、混乱が続く。 | 楽観的 × 技術浸透度低い シナリオ名:「人間中心の進化と調和」 技術依存は低く、人間的な価値観を重視した社会が実現し、地域社会が繁栄する。 |
実際にはもっと具体的なシナリオを作成していったり、もっと掘り下げていく方がより良いシナリオになりますが、0から考えるよりも、構造的に発想することができるようになります!試してみてください。
私たちは未来像の分類だけでなく、描いた未来の社会に生きる「未来人像」を4つのタイプに分けた上で、価値観やライフスタイルなどの検討をします。面白いネーミングをつけるのが楽しいんです。
これは未来だけでなく、肉食系⇄草食系、感情的⇄論理的などで人物像を4タイプで分けて分析した雑誌の特集を見たりしませんか?これを未来人でやってみるような感じです。
ありたい未来の姿から逆算してやるべき事を考える – Backcasting
「こういう未来がいいな」というのぞましい未来が決まったら、そこから逆算して「今何をすべきか」を考える方法がBackcastingです。例えば、「5年後に起業したい」という目標があれば、そこから逆算して必要な勉強や経験を計画的に積んでいくようなキャリアや学校を決める時に少し感覚は近いと言えるでしょう。
このBackcastingを行うためにも、1〜4のプロセスを踏んで「のぞましい未来像」や「育てていきたい未来人像」を高解像度でつくることが重要となります。
現在の延長線上から未来を考えるのが「Forecasting」、ありたい未来から逆算するのが「Backcasting」です。私たちはBackcastingで活用するありたい未来を考える専門集団なので「時間は未来から過去に向かって流れている」という感覚を大事にしています。
みなさんも「時間は過去から未来に向かって流れるのではなく”未来からやってくる”」と思いながら、頭の中のタイムマシンを鍛えてください!
ここまで5つの未来を予報するツールについてご説明してきました。
他にも様々なツールや手法がありますので、またご紹介していければと思います。
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