WEBをサイト公開しました!よろしくおねがいします。

不安にそっと寄り添う絵本『もしものせかい』【みらい読書】

小さい頃、夜寝る前にふと「死」や「別れ」について考えると、胸が締め付けられるような恐怖に襲われたことはありませんか? 大人になった今でも、未来への漠然とした不安に押しつぶされそうになるときがあります。

「もしも、大切な人を失ってしまったら…」
「もしも、明日世界が終わってしまったら…」

そんな「もしも」の世界に、私たちはどう向き合っていけばいいのでしょうか。

私自身、一緒に暮らしてきた猫との別れを経験し、その悲しみからなかなか立ち直ることができませんでした。「もしも、あの子が生きていたら…」心にぽっかりと穴が開いたまま、日常を過ごしていました。

今回紹介する絵本は、ヨシタケシンスケさんが描いた『もしものせかい』です。

もしもの世界に迷い込んだときに

この絵本は、主人公の男の子が、大事にしていたロボットとの別れを通して、もしもの世界、大切なものを失くしたときの心の動きが丁寧に描かれています。

未来を生きる中で、私たちは誰もが、予期せぬ困難や悲しい出来事に遭遇する可能性があります。それは、まるで心の中に❝もしもの世界❞が現れたように、今まで当たり前だった日常がガラリと変わってしまうような体験かもしれません。

❝もしもの世界❞に迷い込んだとき、私たちはどうすればいいのでしょうか? この絵本は、そんな問いかけに、そっと寄り添い、優しく語りかけてくれます。

心の回復力を育む、希望の物語

❝もしもの世界❞は、悲しみや喪失感を否定せず、受け止めることの大切さを教えてくれます。心の穴を埋めることはできなくても、少しずつ、その穴と共に生きていく方法があることを教えてくれます。

困難な状況でも、人は再び立ち上がり、前を向いて歩き出すことができる。この絵本は、そんな心の回復力(レジリエンス)を育んでくれる物語なのです。

未来は予測不能であり、さまざまな出来事が起こりえます。だからこそ、私たちは心の準備をしておく必要があります。『もしものせかい』は、困難な状況に直面したとき、どのように考えれば良いのか、そのヒントを与えてくれました。

つらい出来事があっても、ゆっくりと「いつもの」世界を大きくしていける。この絵本は、そんな未来を生きる力を、私たちにそっと手渡してくれるのです。

そして、もしものせかいが
おおきいひとで あればあるほど、
いつものせかいもおおきく
ふくらませることが
できるはずなんだ

❝もしもの世界❞が大きい人は、いつもの世界も豊かになれるというメッセージに心が響きました。愛猫を亡くして15年以上経ちますが、今でも夢に出てきます。もう現実の世界では会えないけれど、❝もしもの世界❞で繋がっているのだと――。そして、別れの経験もまた、今の私を豊かにしてくれているのだと感じました。

ヨシタケシンスケさんの魔法

ヨシタケシンスケさんの作品は、日常の些細な疑問や普遍的な感情を、独自の視点とユーモアで描き出す点が魅力です。彼の作品は、「これでいいんだ」という肯定的なメッセージに溢れ、読者に新たな発見や共感を与えてくれます。

ユーモラスなイラストと軽妙な言葉で、子どもから大人まで、読む方の心を温かく包み込みます。それはまるで、魔法にかかったような、不思議な読書体験です。

『もしものせかい』もまた、ヨシタケシンスケさんの魔法がたっぷりと込められた、心温まる一冊です。この絵本は、未来への不安を抱える私たちに、そっと寄り添い、希望を与えてくれるでしょう。

未来を生きる子どもたちは、私たち大人が想像もできないような、さまざまな困難に直面するかもしれません。だからこそ、子どもたちには、困難を乗り越える力、心の回復力を育んでほしいと願います。

書名:もしものせかい
著者:ヨシタケシンスケ
価格:1,320円(税込)
出版社:ポプラ社
発売日:2025/2/5(新版)
ページ数:48ページ

井上 薫

井上 薫

Futures Literacy Journal 編集者

編集・ライター 実用書の出版社にて書籍の企画・編集を行う。その後、福祉・介護系のメディアにてWebの編集・取材を担当。2022年にフリーランスとして独立。 趣味は、路上観察と喫茶店めぐり。 特技は、Excelと皿洗い。

未来予報のつくり方
未来予報を読む

おすすめ記事

PAGE TOP