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「水素情報館 東京スイソミル」未来をのぞける博物館 #03

未来をのぞける博物館シリーズの第3弾。今回は、東京都江東区にある「水素情報館 東京スイソミル」を紹介します。

これからの未来を考えるうえでは、日々耳にする環境問題は避けて通れないテーマとなっています。そのテーマを語るにあたって、今注目されているエネルギーのひとつが“水素”です。クリーンなエネルギーであるがゆえ、研究が進んでいるだけでなく我々の暮らしにも導入されつつあるんですね。

本施設は、その水素を通して次世代の暮らしを知ることができる大変貴重な博物館。これからを生きる子ども達の未来について、水素を通して考えてみたいと思います。

次世代エネルギーの夢が詰まった博物館

水色を取り入れたスッキリとしたデザインの外観
入り口の横にある車は水素で走る水素自動車。どのような乗り心地なのかが気になりますね。

持続可能な社会が問われている昨今、日本では、2050年までにカーボンニュートラルの社会実現に向けた取り組みが進められています。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすること。
そうした社会を実現するため、次世代エネルギーとして水素が注目を集めており、その水素を知れる施設が、東京の江東区にある「水素情報館 東京スイソミル」なのです。

訪問時はお客さんが少なかったことから、スタッフの方から様々な説明をしていただけました。

館内の1階では、どのようにして水素からエネルギーが生まれるのか、水素から生まれたエネルギーは私たちの暮らしにどのように活用されるのかについて、パネルや体験を通して知ることができます。

スタッフの方から声をかけてくださり、水素について気になることであれば何でも説明していただける点も嬉しいポイントです。

水素の作り方が学べる水素製造模型
水素ができる仕組みは至って単純

水素のエネルギーを知るうえで、まず気になるのが「どのようにして水素を作るのか」という点ではないでしょうか?

その疑問を説明しているのが、たくさんの水が溜まった水素製造模型です。こちらでは水素を製造する電気分解の仕組みが理解でき、模型の近くにあるハンドルを回すと電気が発生し、実際に水を酸素と水素に分解します。

中学校の理科で扱う内容であるため、誰もが一度は教わっている化学反応です。

水素がどのように活用されていくかをパネルで詳しく説明
自動車に搭載されている実際の燃料電池

電気分解して作られた水素は、私たちが暮らす都市の中でどのようにエネルギーとして活用されているのかについて、さらには東京都が目指す水素社会の将来像については、館内のパネルで詳しく説明されています。

このような未来に向けた取り組みを見ていると、これからの世の中の動きが気になってくるだけでなく、どんな未来が待っているのかワクワクします。

水素自動車へ水素を供給してみよう

現在ではなかなか見る機会がないであろう水素ディスペンサー。

館内を2階に上がると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、水素ステーションに設置されている水素ディスペンサーです。水素自動車に充填する水素ステーションは全国で156か所が稼働中(2022年3月末時点)であり、都内では21カ所。

そうした水素ステーションではどのようにして自動車に水素を充填しているのか。その方法を、体験を通して学ぶことができるのです。

あくまで体験なので、ここでは水素は充填されない。

手順はガソリン車と概ね一緒。ノズルを車につなぎ、水素ディスペンサーのボタンを押すことで水素が充填されます。

脱圧を忘れないことがポイント!

当館に設置されている装置では、充填を終了した後に脱圧をすることがポイント
高圧な水素を扱っていることから、基本的に充填は資格を持った専門のスタッフが行い、一部のスタンドでは安全事項及び操作の説明を受けた人も可能ではあるものの、ガソリンと同じように誰でも充填できるわけではありません

ガソリンのリットルとは異なり、水素ではキログラム単位で表示されるようだ。

普段なかなかこうした体験をできる機会は少ないですし、こうした体験をすることでこれからの水素エネルギーについても一気に関心が湧くのではないでしょうか。

晴海フラッグで進む水素の街づくり

かつての選手村では先進的な水素の街づくりが行われている。

水素の供給体験のみならず、2階の中心に置かれている街の模型からも興味深い話が伺えます。こちらは、2021年の東京オリンピックの選手村として作られた街である晴海フラッグの模型

大会後の「レガシー※となるまちづくり」として、晴海フラッグでは環境先進都市のモデルとしてふさわしいインフラ整備が計画されました。その取り組みのひとつが水素エネルギーを活用した街づくりなのです。
※次の時代に受け継がれていくもの。

水素ステーションを設け、そこからパイプラインを通して水素が運ばれていき、主に共用部分の明かりや空調などのエネルギーに使われています。

水素パイプラインによる住宅・商業施設向け水素供給は国内初の取り組みだけに、まさに未来を牽引する街づくりが行われているのですね。

当館の隣にあるガソリンスタンドにも水素ステーションが設置されている。

晴海フラッグ以外にも、都内では水素エネルギーで走る燃料電池バスが100台以上導入されています。また、当館が位置する江東区でも、燃料電池ごみ収集車が導入されるほか、都内でも最も水素ステーションが多く設置されている(21箇所のうち4箇所)など、水素に向けた取り組みを積極的に進めています。

次世代エネルギーとして期待される水素について、当館を訪れれば、知るだけでなく興味・関心を持てる、とても良い機会になるのではと思っています。

持続可能な社会に対する関心を高めるうえでも、ぜひ訪問してみてはいかがでしょうか。

博物館に行ってみよう!

水素情報館 東京スイソミル

  • 住所:東京都江東区潮見1-3-2
  • 休館日:月曜日、年末年始(12月28日~1月4日まで)
    ※月曜日が祝日の場合は開館し、その翌日が休館となります。
  • 入場料:無料
  • 公式HP:https://www.tokyo-suisomiru.jp/
丹治 俊樹

丹治 俊樹

博物館ライター

博物館マニアであり、「知の冒険」主宰者。本業であるフリーエンジニアのかたわら、博物館ライターとして、珍スポ/遊郭跡/博物館/昭和レトロなど2000スポット以上を取材。テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアに出演するほか、書籍の出版、講演会の開催なども行う。二郎全店制覇。著書に『世にも奇妙な博物館 〜未知と出会う55スポット』などがある。 ブログ「知の冒険」:https://chinobouken.com/

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