シリーズ2030年代の働き方では、さまざまなテーマでこれから現れる{かもしれない}職業に従事する未来人をご紹介します。この未来予報®︎を見て、未来の世界に思索をめぐらせてください。
テクノロジーと感性が交差する時代。
着ること、飾ること、拡張すること。その境界が消えつつある今、ファッションは“身体そのもの”へと進化しています。
今回は、未来のウェアラブルカルチャーを形づくる3人の専門家をご紹介します。
センサーを通して人の物語を刻む《センサーサロンアーティスト・ジャック》
義肢を“新しい身体の表現”として再構築する《ボディデザイナー・クロエ》
命を削らない革で未来を縫い直す《バイオレザーパタンナー・ノア》
彼らは一体どのように、2030年代のファッションと人間の関係性を変えているのでしょうか?
センサーをネイルのように「その人らしく」デザインする:センサーサロンアーティスト
ジャック

センサーサロンアーティスト
わたしは、タトゥーのようなセンサーを依頼主の要望に応じてデザインする仕事
をしています。シール型になっているので、タトゥーというよりも気軽なアクセ
サリーのような感覚で流行しています。センサーをかざして電車に乗れたり、デ
バイスの操作をしたり、医療機関と連携すれば身体データを測ることもできます。
便利ですよね。お風呂も入れるんですよ。いまでは街の中にネイルサロンのように
センサーサロンが沢山あります。わたしの特徴は徹底的に人生の話を聞いた上で
その人なりのデザインに落とし込むこと。ちゃんと人生を刻んでもらいたいからね。
「未来のファッション? いいえ、“あなたの感情”に気づくためのセンサーです。」
ジャックの仕事は、センサーを通じて“生きてきた証”をデザインすること。
タトゥーのように肌に貼るシール型のセンサーデバイスは、いまや「体験の記録装置」として人々に親しまれています。見た目はアクセサリーでも、実はストレス状態や集中の深度、心拍のリズムさえ繊細に読み取れる──そんな“感じる装置”を、人の物語に合わせてカスタムデザインしているのがジャックです。
彼がデザインしたセンサーは、
- パニック症状を持つ若者の“安心できる呼吸パターン”を可視化し、日常生活を支える補助ツールとなったケース
- SNSでの誹謗中傷に悩む学生の“共感度ログ”を共有し、クラスでの対話の起点となった事例
など、単なるガジェットを超えた「共感のインターフェース」として広がっています。
かつて、ファッションは「何を着るか」で自分を表現していました。
いま、ファッションは「どう感じるか」を記録し、社会とつながる手段へと変わりつつあります。
“センサーをデザインするアーティスト”は、身体と心を編み直す新しいケアのかたちを、そっと人々の肌の上に刻んでいるのです。
すでにある「センサーサロンアーティスト」につながる先進事例
・モーションセンサーとLEDを組み合わせた「光る靴」のプロトタイプが開発され、製品化への道をたどっています。
ソニーのスタートアッププロジェクトから生まれた「MESH(メッシュ)」と、新たな写真体験を提供するカメラ「OLYMPUS AIR」がタッグを組んだコラボレーションプロジェクトの発表イベントとなった「オープンイノベーションのはじめ方とつながりのデザイン」の模様をレポートします。
Artists Cyshimi and Occulted are creating wearable tech at your fingertips, exploring how technology can interact with the human body in new and expressive ways
Since the beginning of the Quantified Self Movement, designers have struggled to create wearable tech that people actually want to wear, and that doesn't make the wearer look like a raging Glasshole.
見た目も昨日もその人らしい「身体」をデザインする:ボディデザイナー
クロエ

ボディデザイナー
わたしは、義足や義手のような、身体の一部を作る身体専門のデザイナーです。
ファッショナブルな身体をコンセプトに、様々なデザインを発表しています。
義足や義手は医療器具でしたが、3Dプリンターなどをはじめとする技術の向上で
カスタマイズができるようになりました。メガネが医療品から嗜好品に変わったの
と同じように、ひとりひとりが楽しめるようになったと言えるでしょう。使い
心地はもちろん最高品質を目指しています。最近は義肢だけではなく、自分の皮膚に近
い培養素材で耳の形を変形して見せるようなアクセサリ等の小物も作っています。
「身体は治すもの? いいえ、“まといたくなるもの”です。」
クロエの仕事は、「身体を再構築するデザイン」をつくること。
義足や義手、そして新たに生まれた“生体拡張アクセサリ”──。
かつて“医療機器”と呼ばれていたものが、いまやファッションの一部として進化し始めています。クロエは、3Dプリンターやバイオ素材を駆使して、身体の一部を美しく、快適に、そして自分らしくデザインし直すプロフェッショナル。
彼女が手がけたプロジェクトには、
- 事故で片脚を失ったダンサーのために制作した、舞台照明と連動する“光る義足”
- 先天性の片耳欠損をもつ子どものためにデザインされた、音を振動で伝える“共感の耳”
など、補うのではなく、“魅せる”身体のデザインが数多くあります。
かつて、身体は“修復の対象”でした。
いま、身体は“表現のメディア”へと変わりつつあります。
“ボディデザイナー”という職業は、外見と自己像のあいだにある葛藤をやさしく繋ぎなおし、
誰もが自分の身体を好きになれる未来を、そっと支えているのです。
すでにある「ボディデザイナー」につながる先進事例
Designer Prosthetics: Alternative Limb Project reimagines prosthetics as works of art, while coaxing viewers and wearers alike to reconsider
理想的なデザインにあわせてラボで「革」の形を仕立てる:バイオレザーパタンナー
ノア

バイオレザーパタンナー
わたしの仕事は、バイオテクノロジーを活用して、動物に由来しない革を作る
ことです。ここ数年、動物愛護と環境保護への観点
から、ファッション業界で革製品は避けられてきました。そこで誕生したのが、ラボ
で培養した新たな革素材です。わたしは、デザイナーが作ったイメージ
から、最適な革の土台を培養し、洋服のパターンに仕立てます。動物の革の形に
限定されない斬新なデザインが可能です。革製品の製造には新興国の過酷な労働が
問題視されてきたので、人間にも優しく、誇りを持って良い仕事ができています。
「ファッションは選ぶもの? いいえ、“育てる”時代です。」
ノアの仕事は、命を奪わずに“革”をつくること。
彼が扱うのは、動物を犠牲にしない、ラボで培養された次世代のバイオレザー。
この素材は、環境にも、働く人にも、そして未来の感性にもやさしい。
ノアは、デザイナーの描いたイメージから最適な細胞構成を選び、必要な厚み・しなやかさ・通気性を持った“革そのもの”を育て上げます。
これまでに手がけたプロジェクトには、
- 気温や湿度に応じて透湿性が変化する“呼吸するレザーウェア”
- 血統書のない保護犬のDNAから着想を得た“命をつなぐジャケット”
など、素材からストーリーまで、命の循環を感じさせる製品が並びます。
かつて、革は“奪われた命の証”でした。
いま、革は“共に育んだ物語”へと変わりつつあります。
“バイオレザーパタンナー”は、ファッションを単なる消費から解放し、
人と地球、そして創造のあいだにある“新しいやさしさ”をかたちにする仕事なのです。
すでにある「バイオレザーパタンナー」につながる先進事例
Plant-based leather is a type of material that is made using plant materials, rather than animal hide. Vegan leather can be made using a variety of plant materials, such as cork, bark, and even mushrooms.
3人の共創によって、ある{かもしれない}2036年のニュース
このニュースまであと…
📡【2038年9月7日 LEO7s FUTURE7s special podcast】
🎨 “第二の肌”が社会通貨になる時代へ:ウェアラブル・パーソナライズ憲章、発効へ
2038年9月、国際ファッション・テクノロジー連盟(IFTF)は、個人の身体表現とデジタル機能を両立する「ウェアラブル・パーソナライズ憲章」を正式に採択した。
この憲章では、身体装飾・感情センシング・生体認証・医療支援など、個人に取り巻く全ての“肌の拡張”が法的・文化的に保護されるべき価値として定義されている。
憲章の起草には、3人の異才が関わっていた。
💉【“違和感”をアートに変える、センサーサロンの革命】
ジャックが率いる「センサーサロン・ギルド」は、身体に貼るタトゥー型センサーを、個人の物語に合わせてデザイン・実装することで知られる。
彼らが展開する新サービス『シグナルスキン』では、感情の揺らぎ・社会的ストレス・自己肯定感などの“内なる気配”を可視化し、日常の中で無理なくケアにつなげる。
「ただデータを取るんじゃない。その人の“声なき声”を、肌の上に映すんです。」
🦿【身体は“治す”ものから、“楽しむ”ものへ】
クロエが手がけたのは、“義肢とファッション”の垣根をなくすコレクション『ALTERBODY』。
身体に合わせてカスタムされた義足・義手・人工耳は、従来の機能を遥かに超え、音楽を奏でたり、触れた物の記憶を保存したりといった機能を持つようになった。
また、「耳の形を花びら型に変える」など、義肢ではない“身体のオプション化”も注目を集めている。
「自分の体を選べるって、自己表現の最前線だと思う。」
🧫【“革”に宿る命の物語】
ノアが開発したバイオレザー『Re:Gene Skin』は、ユーザーの生活習慣や感情データから“育てる革”。
持ち主の気分や季節によって質感や色が変化し、まるで“感情を着る”ような体験が実現された。
製造過程には、動物も人も搾取されない倫理的ラボが使用されており、環境に対する新しい価値基準としても国際的に評価されている。
「ファッションって、“何を着るか”じゃなくて“誰と生きるか”なんだよ。」
🪡【コラム:あなたの“外側”は、あなたの“内側”に忠実ですか?】
2030年代、私たちはついに「肌の再定義」に辿り着いた。
それは、単なる技術革新ではない。
内面と外面を切り離さない、新しい自己表現の哲学だ。
センシングは「気づき」へ、義体は「誇り」へ、バイオ素材は「共創」へ。
ファッションは、他者に見せる“衣”から、
自分を見つめる“生き方”そのものへと進化している。
さて、2038年のあなたは、どんな“第二の肌”で社会と関わりたいですか?
キャスターのレオ・レーレがお伝えしました。
2038年、ファッションとテクノロジーの境界線は、静かに、しかし確かに編み直されつつあります。
身体に刻まれる感性をデザインするセンサーサロンアーティスト・ジャック。
身体そのものをファッションにするボディデザイナー・クロエ。
新しい命を宿した革を創るバイオレザーパタンナー・ノア。
彼らの仕事は、服を“着る”ことでも、身体を“隠す”ことでもありません。
「どんな感覚で、誰と、どう生きるか?」という問いに、テクノロジーと感受性で応える仕事です。
触れる皮膚。
変化する身体。
育つ素材。
かつて分かれていたファッション・医療・サステナビリティの領域は、いま、重なり合いながら“生きるための衣”を紡ぎはじめています。
【衣服も身体も、“他者との関係性”から生まれる時代へ】
この時代の変化は、トレンドや機能という「かたちあるファッション」だけでなく、
身体と感情に流れる“記憶”や“語り”そのものを編み直し始めています。
ジャックは「身体の違和感は、まだ言葉になっていない表現。センサーは“語らない声”をすくいあげる」と語ります。
クロエは「義肢はもう“隠すもの”ではない。“魅せる身体”こそが、自己の再発明」と断言します。
ノアは「レザーは命の証だった。今は“関係の証”になりつつある」と話します。
装いも身体も、もはや“機能や所有”だけで語られるものではありません。
触れ合い、変化し、響きあう身体が、ファッションの未来を動かす原動力になるのです。
【あなたは、誰の“肌”に関わりたいですか?】
ジャックたちは、
「ファッション=消費」でも、「身体=固定」でもなく、
“ファッションとウェアラブル=生き方をデザインするプロセス”として働き方を更新しています。
2030年代、服飾スタジオや医療現場、路上のセンサーサロンは、人と身体が出会いなおす“交差点”となるでしょう。
これからの社会では、こうした“装いと生のあいだ”に立つ新しい仕事が、
私たちの着かた、生きかた、そして働きかたそのものを根底から変えていくはずです。
2038年。あなたは、どんな「身体の未来」に関わる仕事をしていたいですか?