「2035年、あなたはどんな働き方をしていますか?」
厚生労働省が2016年に発表した「働き方の未来2035」は、AIやIoTの技術革新により、時間や場所にとらわれない働き方が当たり前になる社会を描いています。一人ひとりが専門性を持ち、複数の仕事を掛け持ちしながら自律的に働く——それが2035年の姿です。
発表から9年。テレワークや副業解禁など変化は始まっていますが、実現には課題も多く残されています。
この記事では、報告書が示す未来像と7つの提言、そして企業・個人が今取り組むべきことを解説します。

「働き方の未来2035」とは何か
「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」は、厚生労働省が設置した懇談会が2016年8月に発表した報告書です。グローバル化、少子高齢化、AI等の技術革新による産業構造の大転換を見据え、20年後の働き方と必要な政策を示しています。
厚生労働省懇談会が2016年に発表した未来予測レポート
懇談会は2016年1月に設置され、フューチャー株式会社の金丸恭文氏を座長に、東京大学の柳川範之教授、サイボウズの青野慶久氏、小松製作所の浦野邦子氏など、産学官の有識者14名で構成されました。
| 項目 | 内容 |
| 開催期間 | 2016年1月~8月(全12回) |
| 座長 | 金丸恭文(フューチャー株式会社代表取締役) |
| メンバー数 | 14名(経営者、学識者、ジャーナリスト等) |
| アドバイザー | 日本労働組合総連合会、日本経済団体連合会等 |
懇談会設置の背景には、従来の労働政策の延長線上では対応できない構造的変化がありました。日本の人口は2035年に1.12億人まで減少し、高齢化率は33.4%に達すると予測されています。同時に、AI、IoT、VRなどの技術革新が急速に進み、働く場所や時間の制約が消失していく時代が到来します。
こうした変化を「脅威」ではなく「チャンス」と捉え、一人ひとりが輝ける社会を実現するための新しい労働政策を構築することが、報告書の目的です。
参考:厚生労働省「働き方の未来 2035」
技術革新と少子高齢化を前提とした労働政策の再設計
報告書が前提とする2035年の社会は、以下の3つの大きな変化が同時に起こります。
人口構造の変化
| 指標 | 2016年 | 2035年(予測) | 変化 |
| 総人口 | 1.27億人 | 1.12億人 | -1,500万人 |
| 高齢化率 | 26.7% | 33.4% | +6.7pt |
| 労働力人口 | 減少傾向 | さらに減少 | – |
技術革新の進展
- AI:ビッグデータと機械学習により、定型業務の大半が自動化
- 通信速度:2035年には100Gbps超、モバイルでも高速通信が当たり前
- VR/AR/MR:遠隔地でもリアルな共同作業が可能に
- 自動翻訳:言語の壁が消失し、世界中の人材が流動化
産業構造の転換
2035年に向けて、情報通信業、医療・福祉、その他サービス業のみが就業者数の増加が予測されており、その他の産業は軒並み減少すると見られています。
従来の労働政策は、工場や事務所で決まった時間働く「労働者」を前提に設計されてきました。しかし2035年には、その前提が崩れます。場所や時間にとらわれない働き方が主流になり、企業組織もプロジェクト型に変容し、一人が複数の仕事を持つことが当たり前になります。
そのため、「雇用されている人」だけを対象とした法制度ではなく、より幅広く「働くすべての人」を対象とした制度への再設計が不可欠です。民法(契約の基本)を土台に、情報の非対称性への対処、優越的地位の濫用防止、セーフティネットの構築、能力開発機会の提供という4つの視点から、新しい労働政策を組み立てていく必要があります。
報告書は最後に、こう結んでいます。「2035年という未来は、待っているだけでは訪れない。未来を描き、行動することで、はじめて理想の未来が実現する」。発表から9年が経過した今、この提言がどこまで実現し、何が課題として残っているのかを見ていきましょう。
2035年に予測される社会環境の変化
報告書が描く2035年は、人口減少と技術革新という2つの大きな波が同時に押し寄せる社会です。この変化は、働き方だけでなく、企業組織、地域コミュニティ、教育システムまで、あらゆる社会システムの再設計を迫ります。
少子高齢化の進展|人口1.12億人、高齢化率33.4%の社会
2035年の日本は、世界でも類を見ない超高齢社会を迎えます。
| 指標 | 2016年 | 2035年(予測) | 変化 |
| 総人口 | 1.27億人 | 1.12億人 | -1,500万人 |
| 高齢化率(65歳以上) | 26.7% | 33.4% | +6.7pt |
| 世界人口 | 73億人 | 85億人 | +12億人 |
世界の人口が増加する中、日本だけが減少していきます。労働力人口はさらに減少し、現在以上に深刻な人手不足が予想されます。
産業別就業者数の予測では、増加が見込まれるのは情報通信業、医療・福祉、その他サービス業のみ。製造業、建設業、小売業など、多くの産業で就業者数の減少が予測されています。
この状況に対し、報告書は「高齢者や女性の活躍、外国人人材の受入」を促進するだけでなく、AI・ロボット技術によって省力化を進め、一人あたりの生産性を飛躍的に高めることの重要性を強調しています。
少子高齢化は制約ではなく、技術革新を取り入れる強力な動機になるという視点です。実際、過酷な労働環境や後継者不足に悩む産業こそ、AIロボットの導入効果が大きいとされています。
AI・IoT・VRなど技術革新がもたらすインパクト
報告書は、2035年に向けて確実に進む技術革新として、以下を挙げています。
| 技術分野 | 2016年頃の状況 | 2035年の予測 |
| 処理速度 | – | スパコン性能10の21乗演算/秒 |
| 通信速度 | 数Mbps~数百Mbps | モバイルで100Gbps超 |
| センサー | IoT黎明期 | 年間1兆個規模のデバイス活用 |
| VR/AR/MR | 実用段階 | 遠隔地でもリアルな共同作業可能 |
| 移動技術 | 自動運転研究段階 | 自動運転・最適誘導で渋滞消失 |
| 自動翻訳 | 精度に課題 | 言語の壁が消失 |
これらの技術革新により、2035年には物理的な制約がほぼゼロになります。いつでも、どこでも、誰とでも働けるようになるのです。報告書が特に重視するのが自動翻訳です。言語の障壁がなくなると、人材の流動性が国境を越えて高まり、優秀な人材は世界中で最も高く評価される場所に移動するようになります。日本がどれだけ魅力的な働く場所かが、改めて問われることになるのです。
産業構造の転換|AIが得意な仕事と人が得意な仕事
AI技術の進展により、仕事の内容が大きく変わります。報告書は、AIを「大人のAI(合成知能)」と「子どものAI(労働機械)」に分類し、それぞれが得意とする分野を示しています。
| AI種類 | 主な活用分野 | 代替される業務 | 人間の役割 |
| 大人のAI | 広告、マーケティング、教育、金融、医療、法律、人事 | 定型的な業務で多少の間違いが許容される業務 | 例外対応、大域的判断 |
| 子どものAI | 警備・防犯、農業、物流、建築、土木、調理、掃除 | 認識を含めた作業全体 | 監督業務、異常時の判断 |
一方で、人間にしかできない新しいタイプの仕事も出現します。
| 仕事の種類 | 具体例 | AIにできない理由 |
| 価値評価 | 面白いか、美しいか、おいしいか、善悪の判断 | 人間の感性に基づく評価は工学的再現が困難 |
| ヒューマンタッチ | 接客、カウンセリング、対人サービス | 人間同士の交流に満足を得る本能的欲求 |
| 起業・企画 | 経営、商品開発、サービス開発、ニーズ把握 | 創造性と総合的判断が必要 |
報告書は、技術革新により失われる雇用を、新しい雇用が上回ることを理想としています。重要なのは、AIとの競争ではなく、AIを活用して人間にしかできない価値を生み出すことです。専門性を要する仕事でもパターン化できる部分はAIに任せ、人間は創造性や対人能力が求められる部分に集中する。そのような役割分担が2035年の働き方の基本になります。
2035年における働き方の変化【報告書が描く未来像】
技術革新により、2035年の働き方は現在とは全く異なるものになります。報告書は、「働かされる」のではなく「自分の意思で働く場所と時間を選べる時代」への転換を強調しています。
時間や空間にしばられない働き方の実現
かつては、多くの人が同じ部屋に同時に集まらなければ仕事が進みませんでした。しかし情報技術の進展により、異なる空間にいてもネットを通じたコミュニケーションや共同作業が可能になり、2035年に向けてこの流れはさらに加速します。
| 項目 | 従来の働き方 | 2035年の働き方 |
| 働く場所 | オフィスに出社が前提 | いつでもどこでも働ける |
| 働く時間 | 同時刻に共同作業が必須 | 非同期での作業も可能 |
| 評価基準 | 労働「時間」が中心 | 「成果」による評価 |
| 長時間労働 | 是正が困難 | 不必要な長時間労働は消失 |
もちろん、工場での作業のように現場に人がいなければならないケースもありますが、そのような物理的作業の大半は2035年までにはロボットがこなすようになると予測されています。
重要なのは、技術革新によって人々が「いつでもどこでも働かされる」のではなく、「各個人が自分の意思で働く場所と時間を選べる」ことです。自分のライフスタイルを自分で選べる時代への変化こそが本質であり、技術革新の成果はそのために積極的に活用されるべきだと報告書は強調しています。
企業組織のプロジェクト化と「正社員」概念の変化
技術革新は働き方だけでなく、企業組織そのものを変容させます。変化のスピードが速くなることで、企業は機動的に変化せざるを得なくなるからです。
| 項目 | 従来の企業 | 2035年の企業 |
| 組織形態 | 国家やコミュニティのような存在 | プロジェクトの塊 |
| 雇用形態 | 企業が人を抱え込む「正社員」 | プロジェクト期間内の所属 |
| 内外の境界 | 明確な組織の壁 | 内と外の垣根が曖昧 |
| 所属期間 | 長期雇用が前提 | プロジェクト終了で移動 |
2035年の企業は、極端に言えば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となります。多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属しますが、プロジェクト終了とともに別の企業に所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて柔軟に企業の内外を移動します。
複数の仕事を持つことが当たり前になる社会
企業がプロジェクト型組織になるにつれて、働く側も自分の希望とニーズに応じて働くプロジェクトを選択するようになります。その結果、働き方の選択肢が大きく広がります。
| 働き方のパターン | 内容 |
| 専念型 | 一つの会社、一つのプロジェクトに従事 |
| 複数プロジェクト型 | 一つの会社の複数プロジェクトに同時参加 |
| 複数企業型 | 複数の会社のプロジェクトに同時参加 |
| ミックス型 | 営利組織と非営利組織の両方に所属 |
個人事業主と従業員との境が曖昧になり、組織に所属することの意味が変わります。複数の組織に多層的に所属することも出てきます。プロジェクトには非営利なもの、社会貢献を目指すもの、自己実現を中心としたものもあります。
「就社」から「就職」へ|専門性重視のキャリア形成
このような働き方になれば、今とは違って、人は一つの企業に「就社」するという意識は希薄になります。専門的な能力を身に着けて、専門的な仕事をするのが通常になるからです。
| 項目 | 従来のキャリア | 2035年のキャリア |
| 就職の意味 | 企業に「就社」 | 専門職業に「就職」 |
| 能力の性質 | 企業内スキル | ポータブルスキル |
| 転職 | ネガティブな印象 | 柔軟に行える前提 |
| キャリア形成 | 一社で完結 | 複数社を経験して形成 |
どのような専門的な能力を身に着けたかで、どのような職業に就くかが決まるという、文字通りの意味での「就職」が実現します。
働く人と企業の関係性の変化
働く人の選択肢が広がる一方で、企業側も変化を迫られます。企業の多様化が進む中で、一部の大企業はロイヤリティを有した組織運営を継続していくでしょう。しかし、これまでのように企業規模が大きいことのみでは働く人のニーズを満たすことはできません。
| 評価軸 | 従来 | 2035年 |
| 企業の魅力 | 規模の大きさ、安定性 | チャンス提供、自己実現の場 |
| 経営目標 | 企業規模の拡大 | 企業の個性を磨き、選ばれる企業へ |
| 人材確保 | 新卒一括採用 | 働く個人から選ばれる必要性 |
企業経営者は、企業規模を拡大させることよりも、企業の個性を磨き魅力を高め、働く個人から選ばれる企業を目指すことが求められます。
地域・コミュニティ・ライフスタイルの変革
働き方の変化は、どこで暮らすか、誰とつながるか、どう生きるかという根本的な選択にも影響を与えます。報告書は、地域の可能性、新しいコミュニティのあり方、そしてあらゆる制約からの解放を描いています。
地方と世界が直接つながる「グローカル」時代
2035年においては、都市と地方の姿が今とは大きく異なります。ITの進展によって働く場所の制約がなくなると、地方において豊かな自然を満喫しながら、都市に住むのと同じようにクリエイティブな仕事ができるようになります。
| 項目 | 従来の地方 | 2035年の地方 |
| 働き方 | 1次・2次産業中心 | 産業の仕切りが意味を失う |
| つながり | 都市経由で世界へ | 直接海外とつながる |
| 人材 | 流出が課題 | 多様なリソースが流入 |
| 収益機会 | 限定的 | 6次産業化で稼ぐ若者・女性・高齢者が増加 |
地方の中核都市や小さな町、村が直接海外とつながっていくことが可能になり、地方の価値を海外に向けて提供していく時代になると報告書は予測しています。
企業コミュニティからSNS・職種別コミュニティへ
個人の働き方が大きく変わることによる企業の変質は、コミュニティのあり方にも大きな変化をもたらします。
| コミュニティの種類 | 従来 | 2035年 |
| 企業コミュニティ | 国家・家族のような役割 | 疑似コミュニティ機能は低下 |
| 地域コミュニティ | 希薄化 | 再び重要性が高まる可能性 |
| バーチャルコミュニティ | 限定的 | SNSを中心に重要な位置を占める |
| 職種別コミュニティ | 一部の専門職のみ | 多くの職種で形成される |
これまで企業は、単に働く場を提供するだけでなく、ひとつの国家、コミュニティ、家族のような役割を担ってきました。しかし、自立した個人が多様な価値観をもって自由に働く社会では、働く人の企業への帰属意識は薄れ、疑似コミュニティとして機能することは難しくなります。
その代替として、実際に居住する地域コミュニティの役割が再び重要になってくる可能性があります。地域コミュニティでの相互扶助などが働く人を支えることもあり得ます。
一方で、SNSなどを利用したバーチャルなコミュニティが一段と重要な位置を占めるようになるのは間違いありません。ICTの進歩は、バーチャルなコミュニケーションに急速にリアリティを持たせます。
同じ企業で働いているという帰属意識よりも、同じ職種や専門領域で働いているという共通意識の方がより強くなり、SNSなどで疑似コミュニティを作っていくことになるでしょう。こうした疑似コミュニティによる連携が、個々の働く人と企業などが契約を結ぶ際に、より対等の力関係を持つことに寄与するようになります。
報告書は、労働組合も企業別・業界別の運営から職種別・地域別の連帯も重視した、SNSやAI、VRなどの技術革新を活用した新しい時代にふさわしい組織として進化していくことが求められると指摘しています。
介護や子育てが制約にならない社会の実現
2035年には働く人が大幅に減少することから、人手不足が一段と深刻になります。そうした中で、AI等の科学技術の発達による自動化・ロボット化によって、介護や子育て、家事などの負担から働く人が解放されることが期待されます。
| 分野 | 2035年の姿 |
| 子育て | 0歳から希望者全員が質の高い保育・教育を受けられる |
| 学童保育 | 希望者全員を受け入れ、経済的事情に関わらず選択可能 |
| 介護 | 健康管理システムで予防、介護ロボット導入で負担軽減 |
| 家事 | 掃除・調理などのロボット化でアウトソーシング容易 |
| 働き方 | 自由な働き方で介護・子育て時間の確保が容易 |
介護や子育て、家事などのアウトソーシングを可能にする多様な高品質のサービス・ビジネスが広がり、介護や子育てが働くことの制約にならない社会になることが重要です。
また、働き方自体がより自由なものに変わっていく結果、自ら介護や子育てを行いたい働く人が、相応の時間を割いたり、仕事を休んだりすることが容易になります。
すべての「壁」を超える|性別・年齢・国籍・障がいの垣根撤廃
空間や時間の制約を受けない多様な働き方が一般的になると、あらゆる壁が消滅します。
| 壁の種類 | 2035年の姿 |
| 言語の壁 | AIの発達により多言語間のコミュニケーションのハードルが低下 |
| 国境の壁 | 仕事やサービスが簡単に国境を超える |
| 性別の壁 | 男女が共に働くことが一般的に |
| 年齢の壁 | 現役長寿が普通、いつまでも働き活躍できる |
| 障がいの壁 | ITやロボットの活用で制約のあった人が自由に働ける |
AIによる自動翻訳が進めば、仕事やサービスは簡単に国境を超えます。VR技術であたかも隣でサービスをしているように感じられても、実際は地球の裏側にいる可能性もあります。働き方の慣行や制度が日本独自のものであり続けた場合、日本の働く人はガラパゴス化し、多くの仕事は世界に分散していきます。報告書は、「世界で最も働きやすい場所」として、性別、人種、国籍、年齢、LGBT、障害の有無などが「壁」に一切ならない社会を築くべきだと強調しています。
2035年に向けて必要な制度改革【4つの基本視点】
報告書は、2035年の多様な働き方を実現するために、狭い意味での雇用関係だけでなく、より幅広く「働くすべての人」を対象とした法制度の再設計が必要だと指摘しています。民法(契約の基本)を土台に、以下の4つの視点から追加的な手当てが求められます。
①適切な情報が流れるための枠組み
自由な活動と契約で市場メカニズムがうまく機能するには、当事者が十分な情報のもとで判断することが大前提です。働くという活動は、仕事内容や働く人の能力など、十分な情報を得にくいという度合いが他の経済取引より格段に高いため、情報の非対称性を軽減する仕組みが必要です。
| 情報開示の内容 | 具体例 |
| 働き方の基本姿勢 | 労働条件、企業文化、働き方の方針 |
| キャリアパス情報 | 実際の社員がどんなキャリアを歩んでいるか |
| 比較可能な情報 | 一定のルールやフォーマットに基づく開示 |
| 情報プラットフォーム | ワンストップで入手・比較検討できるサイト |
企業は自社の魅力を明示し、働く人が適切に選択できる環境を整える必要があります。虚偽の開示に対する罰則規定も必要ですが、基本は企業の自主的な取り組みとして行われるべきです。
②保障・保険的な機能の提供
働くという契約は生身の人間の生活と密接に関わるため、生命の危険にさらされるような過酷な活動や、人間らしく生活できる所得の保障、リスクに備える保険的機能が必要です。
| 保障の種類 | 内容 |
| 生活保障 | 人間らしく生活できる所得の確保 |
| 失業保障 | 失業時の生活とキャリアアップ支援 |
| リスク保障 | 疾病、事故などへの備え |
| 民間保険の活用 | 国が直接提供するのではなく民間を後押し |
これらの保障は、最終的に国が責任を持つとしても、民間の創意工夫による適切な保険の提供という形で行われることが望ましいとしています。
③優越的地位に対する対処
2035年には自律的な契約が増えますが、強い交渉力を背景にした優越的地位による格差が存在する場合も考えられ、その場合の法的手当てが必要です。
| 対処方法 | 内容 |
| 独占禁止法 | 一般的な事業者間取引での対処 |
| 新たな枠組み | 働く活動に特化した法的手当ての検討 |
| 対象範囲の見直し | どのような法的枠組みを用いるか抜本的検討 |
一般的な事業者間取引では独占禁止法で手当てされている問題であり、かなりの部分それで対処できる面があります。どのような法的枠組みを用いるか、対象者の範囲や中身も含めて抜本的に検討していく必要があります。
④能力開発・教育訓練の機会確保
企業が大きく変容する中で、今まで企業内で行われてきた能力開発や技能訓練がどこまで通用するかが課題です。各企業は企業内独自スキルを市場型スキルとして標準化できるよう、業界全体で協力すべきです。
| 施策 | 内容 |
| スキルの標準化 | 企業内スキルを市場型スキルに |
| 教育機会の提供 | より幅広く活躍できる能力開発 |
| 個人への支援 | インターネットやVRを活用した最適な教育 |
| 法的手当て | 教育訓練を受けやすくするための施策 |
個人がインターネットやVRなど最新技術を活用して世界中から最適な教育を受けることも可能になりますが、それでは十分な訓練を受けるチャンスすらない可能性もあり、何らかの法的手当てや施策が必要です。
働き方の変化に対応する生涯教育のあり方
技術革新によって教育も大きく変わります。遠隔教育が当たり前になるだけでなく、働き方や企業組織の変化に合わせた教育システムの再検討が必要です。報告書は、自立して働くための教育、生涯にわたるスキルアップ、多様な人材への対応という3つの視点から教育改革を提言しています。
自立するための教育|「好きで得意な道選び」を支援
自立した個人が積極的に活躍できる社会を実現するには、教育のあり方を早急に見直すべきです。本人の立場に立てば、「好きで得意な道選び」を実現するための教育が必要です。時代とともに好きなことも得意なことも多様化し、今ある職業が将来も存在するとは限りません。
| 教育の視点 | 内容 |
| 多様な機会の提供 | 知らなかったから選べなかったを最小限に |
| カリキュラムの自由度 | 現場の裁量で柔軟な編成が可能に |
| 複線的・可塑的プログラム | 道を変更したい時にやり直しができる |
| 実践的・職業的専門性 | 世の中の様々な選択肢とアプローチ方法を学ぶ |
教育現場では様々な機会が提供され、現場の裁量である程度の自由度を持ったカリキュラム編成が可能になるべきです。道を進むうちに向いていなかったと気づいた場合は、少し戻って改めて他の道を選択し直すことができるよう、高等教育は複線的、可塑的、生涯教育的なプログラムを用意すべきです。
生涯やり直しができる再教育システムの構築
働く場所を変えたり、新たな働き場所を探すための実践的、職業的な生涯教育、職業訓練の提供が重要です。企業組織がプロジェクト型に変容すると、企業のみに期待するのは困難です。
| 支援の方向性 | 内容 |
| 企業支援から個人支援へ | 働く人自身の教育を支援する制度に軸足を移す |
| 多面的な教育方法 | 座学だけでなく企業内インターンも金銭的に支援 |
| トランポリン型セーフティネット | やり直しのための再教育の仕組みを整備 |
| 財政的支援の充実 | 職業教育、職業訓練を受けることへの支援拡大 |
政府は企業支援から働く人自身の教育支援に軸足を移すべきです。座学だけでなく企業内インターンを通じた技能習得への金銭的支援など、教育のあり方は多面的に考えていくべきです。
多様な人材に合わせた教育プログラム
2035年には多様な人材が日本で活躍するため、教育も多様な状況に合わせて木目細かくする必要があります。外国人人材とその家族への教育、日本人材への多文化教育の両面が重要です。
| 対象 | 教育内容 |
| 外国人人材と家族 | 日本語教育、日本文化・社会への理解 |
| 日本で生まれ育つ人材 | 海外の言語や文化への理解 |
| すべての人材 | 多文化共生の取り組み(初等教育から高等教育まで) |
| 職業教育としての語学 | 必要に応じて受けられる生涯教育 |
グローバルに働く環境が当たり前になる中では、どんな国籍の人材でも海外の言語や文化への理解が重要です。英語での高等教育を充実させるなど、多文化共生の取り組みを初等教育から高等教育まで行う必要があります。
実践的・職業的な専門性を磨く高等教育への転換
高等教育では、世の中で「働くこと」「生きていくこと」の様々な選択肢が存在することを理解させ、その選択肢にアプローチするための実践的、職業的な専門性を磨くことに、より重きが置かれるべきです。
| 改革の視点 | 内容 |
| 教員のキャリア | 途中で他の道へ進んだり戻ったりする柔軟なキャリアを体現 |
| 基礎能力の習得 | 方向転換の前提となる共通の基礎能力を初等・中等教育で |
| 英語での高等教育 | 多文化共生の充実 |
| いつでも学べる仕組み | 職業教育の一つとして、必要に応じて受けられる |
教員自身が柔軟なキャリアを体現できるようにすることも肝要です。また、方向転換の前提となる共通の基礎能力を初等・中等教育の段階で身に着けさせることも必要です。
「働き方の未来2035」7つの提言【政策の方向性】
報告書は最後に、2035年に向けて政策の方向性を7つの提言としてまとめています。これらは単なる理想論ではなく、技術革新のチャンスを最大限に活かし、すべての人が輝く社会を実現するための具体的な行動指針です。
提言① 技術革新は大きなチャンスをもたらす
AIを中心とした技術革新は、今後の経済構造を急速かつ大きく変えます。これは働くすべての人々に大きな恩恵を生み出し得ます。働く場所の物理的制約がなくなり、多くの仕事がいつでもどこでもできるようになるからです。
| 恩恵を受ける領域 | 内容 |
| すべての人 | 障害などで制約があった人もより自由に働ける |
| 日本経済 | 少子高齢化、人口減少、過疎化の課題解決に寄与 |
| 地方 | 過疎化や高齢化が進む地域にこそメリット |
| 農林水産業 | AIによる生産性や収益性の向上が大きく期待される |
IT やロボット等をうまく活用することで、障害などにより今まで働くことに制約があった人々が、より自由度をもって働くことができます。すべての人が、自由で自律的であるとともに、より充実感のある働き方ができるチャンスです。
提言② 新しい労働政策の構築が不可欠
技術革新の恩恵を働くすべての人、経済全体にもたらすには、技術革新や産業構造の変化に合わせて、あるいはそれを先取りする形で、新しい労働政策を構築していく必要があります。
| 必要な取り組み | 内容 |
| 働き方の構造変化への対応 | 技術革新により働き方が大きく変化 |
| 企業の変容への対応 | 変化のスピードが速く企業も機動的に変化 |
| 根本に立ち返った検討 | 民法の基本的枠組みから何が不十分かを検討 |
新しい労働政策を構築できない限り、人々が十分に活躍することは困難になり、日本経済はチャンスを生かすことができず、大きな困難に直面することになります。働くという活動に対して、民法の基本的枠組みによる対処だけでは何が不十分でどのような手当てが必要かという根本に立ち返った検討も必要です。
提言③ これからのコミュニティのあり方
急速な環境変化と個人の働き方の変化による企業の変質は、コミュニティのあり方にも大きな変化をもたらします。これまで企業が担ってきたコミュニティの役割を、代替するものが生まれてきます。
| コミュニティ | 役割 |
| 地域コミュニティ | 生活重視の流れで再び重要に |
| SNS等の疑似コミュニティ | 同じ職種や専門領域での共通意識 |
| 職種別・地域別労働組合 | 技術革新を活用した新しい組織への進化 |
同じ企業で働く帰属意識よりも、同じ職種や専門領域で働く共通意識の方が強くなり、SNSなどで疑似コミュニティを作っていきます。労働組合も企業別・業界別とともに職種別・地域別の連帯を重視し、SNSやAI、VRなどの技術革新を活用した新しい時代にふさわしい組織として進化することが求められます。
提言④ 人材が動く社会と再挑戦可能なセーフティネット
新しい労働政策で重要なのは、自由で自律的な働き方が増え、人材が企業間を動いていくことを積極的に捉える視点と、やり直しや再挑戦を可能にする仕組みを政府が責任をもって整える視点の適切な組み合わせです。
| セーフティネット | 内容 |
| 再教育の仕組み | やり直しのための職業教育、職業訓練 |
| 財政的支援 | 個人が教育訓練を受けることへの支援充実 |
| 教育内容の充実 | それぞれの事情に合わせた教育 |
| 情報開示の充実 | 日本型の再挑戦可能な仕組みの確立 |
環境が変化し、自身の能力や関心が変わる中では、時代の変化に応じて違う働き場所や働き方が必要になることを前向きに捉えていく発想が必要です。単に生活できるセーフティネットだけでなく、より良い働き方ができるようにするためのセーフティネットを日本の実態に合わせて充実させることが必要です。
提言⑤ 適切な働き場所を選択できる情報開示の仕組み
正しい選択は、きちんとした情報と理解のもとではじめて可能になります。働き方の選択にあたっては、必要な情報が比較可能な形で提供されるための枠組みづくりが求められます。
| 情報開示 | 内容 |
| 契約の基本概念 | 契約を結ぶとはどういうことかの理解 |
| 働き方の基本姿勢 | 会社ごと、職種ごとの明示 |
| キャリアパス情報 | 実際の社員がどんなキャリアを歩んでいるか |
| 情報プラットフォーム | ワンストップで入手し比較検討できる仕組み |
企業は「どんな働き方を求めるか」を正確に提示し、働く人はそれを見て選択できることが極めて重要です。働き方に関する情報を簡単に入手し比較検討できるよう、情報が一覧できるウェブサイト等の情報プラットフォームが整備されることも重要です。
提言⑥ 働き方と税・社会保障の一体改革
企業と個人との関係が2035年においては大きく変わるため、税と社会保障のあり方もその変化に合わせた形で構築していく必要があります。
| 改革の視点 | 内容 |
| 個人単位の制度 | 家族単位から個人単位へ |
| 中立的な設計 | 働く場所や時間から中立的な形で整備 |
| 一体での議論 | 働き方、税、社会保障を密接不可分に |
男女が共に働くことが一般的になることを考えると、世帯主が配偶者を扶養することを前提とした家族単位の税制や社会保障制度を、家族が働くことが不利にならない個人単位に置き換えることが重要です。税と社会保障は、働く場所や時間からできるだけ中立的な形で整備されるべきです。
提言⑦ 早急かつ着実な実行を
技術革新を中心とした大きな変化が、働くすべての人に恩恵をもたらすためには、新しい労働政策を考え、構築していく必要があります。しかし、法律や制度の変更には詳細な検討にかなりの時間を要するため、これを将来の課題ではなく、今現在の喫緊の課題として捉えることが大切です。
| 実行のステップ | 内容 |
| 具体的な施策 | 報告書の方向性に沿った施策の策定 |
| 体制づくり | 検討・実行のための組織体制 |
| 工程表の作成 | 段階的な実現に向けた工程表 |
| 早急かつ着実に | 今すぐに検討を開始 |
本報告書の方向性に沿って、具体的な施策、体制および工程表をつくり、早急かつ着実に新しい労働政策のあり方を検討していく必要があります。それによって、いつでもどこでも、一人ひとりに合った自己実現ができ、自分らしい働き方ができる社会が構築されることを強く望むと報告書は結んでいます。
2035年に向けた課題と現状のギャップ|実現への道筋
報告書の発表から9年が経過しました。2035年まで残り11年となった今、何が実現し、何が遅れているのか。現状を検証し、残された課題を明らかにします。
報告書発表から9年、何が進み何が遅れているのか
2016年の報告書発表後、特に新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に普及し、副業・兼業を認める企業が増えるなど、一部の変化は確実に進んでいます。
| 項目 | 進捗状況 | 現状 |
| テレワーク | ◎進んだ | コロナ禍で一気に普及、定着も進む |
| 副業・兼業 | △進んだ | 認める企業は増加も、実践者は限定的 |
| 正社員・非正規の区分 | ×遅れている | 依然として格差が存在 |
| 終身雇用 | △変化の兆し | 大企業でも見直しの動きはあるが主流は維持 |
| 情報開示の仕組み | △一部進展 | 一部企業で進むも制度化には至らず |
| 教育改革 | ×遅れている | 実践的・職業的教育への転換は進まず |
| 税・社会保障改革 | ×遅れている | 家族単位から個人単位への転換は未実現 |
最も遅れているのは制度面です。正社員と非正規社員の格差は依然として存在し、税制や社会保障制度も家族単位が基本のまま。教育改革も実践的・職業的専門性を磨く方向への転換は進んでいません。
職のミスマッチ時代への対応
報告書が指摘する「職のミスマッチ」は、2020年代後半に本格化すると予測されています。AIやロボットによる自動化が進む一方で、新しい仕事に必要なスキルを持つ人材が不足する事態です。
| ミスマッチの種類 | 内容 | 対策の現状 |
| スキルミスマッチ | 定型業務が消失、新スキルが必要 | リスキリング支援は始まったが規模は小さい |
| 地域ミスマッチ | 都市部に人材集中、地方は不足 | リモートワーク普及で改善の兆しあり |
| 年齢ミスマッチ | 高齢者の活躍の場が限定的 | 定年延長は進むも、新しい働き方への移行は遅れる |
政府は「リスキリング支援」を掲げていますが、個人が気軽に学び直せる環境整備や、企業が従業員のキャリアチェンジを支援する仕組みはまだ十分とは言えません。報告書が提言する「トランポリン型セーフティネット」の実現には程遠い状況です。
終身雇用制度の変容と新しい雇用形態
終身雇用制度は徐々に変容の兆しを見せています。大企業でも「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への移行を表明する企業が増え、専門性重視の採用・評価制度を導入する動きが広がっています。
| 雇用形態 | 従来 | 現在の変化 | 2035年の姿(報告書) |
| メンバーシップ型 | 主流 | 一部でジョブ型へ移行 | プロジェクト型が主流 |
| 新卒一括採用 | 主流 | 通年採用も増加 | 専門性重視の採用 |
| 年功序列 | 主流 | 成果主義の導入進む | 完全に成果評価 |
| 企業への帰属 | 強い | やや弱まる | 帰属意識は希薄に |
しかし、報告書が描く「企業がプロジェクトの塊になり、人がプロジェクト期間内だけ所属する」という姿には、まだ遠い状況です。多くの企業で依然として長期雇用が前提であり、「正社員」「非正規社員」という区分も意味を持ち続けています。
製造業における転換点とDXの必要性
製造業は、報告書が最も大きな変化を予測している分野の一つです。AIやロボットによる自動化、IoTによるスマート工場化など、DX(デジタルトランスフォーメーション)が競争力の鍵となります。
| 製造業のDX | 報告書の予測 | 現状 |
| 生産の自動化 | AIロボットが大半の作業を担う | 一部の大企業で進むも中小は遅れる |
| IoT活用 | スマート工場が標準に | 導入企業は増加も全体では一部 |
| 熟練技能の継承 | AIによる技能のデジタル化 | 実証実験段階、実用化は限定的 |
| 人の役割 | 監督業務、例外対応、創造的業務 | まだ多くの現場作業を人が担う |
中小製造業では、DX投資の負担が大きく、人材不足もあり、導入が遅れています。報告書が描く2035年の姿を実現するには、中小企業へのDX支援を一層強化し、デジタル人材の育成を加速させる必要があります。製造業の転換は、日本経済全体の生産性向上に直結する重要課題です。
企業・個人が今から取り組むべきこと
2035年まで残り11年。報告書が描く未来を実現するには、企業も個人も今すぐ行動を始める必要があります。ここでは、具体的に取り組むべきアクションを提示します。
企業が取り組むべき3つのアクション
2035年に向けて、企業は組織のあり方、情報開示、人材育成の3つの観点から変革を進めるべきです。
| アクション | 具体的な取り組み | 期待される効果 |
| ①プロジェクト型組織への移行準備 | 部門横断のプロジェクト推進、社内外の人材活用、期間限定の契約形態導入 | 変化への対応力向上、優秀な人材の確保 |
| ②情報開示と働き方の透明化 | キャリアパス情報の公開、働き方の基本姿勢の明示、労働条件の比較可能な開示 | 働く人から選ばれる企業へ、ミスマッチの減少 |
| ③社員の専門性育成とリスキリング支援 | 企業内スキルの市場型スキルへの転換、職業訓練への投資、副業・兼業の積極的推奨 | 社員の市場価値向上、組織の競争力強化 |
プロジェクト型組織への移行は、いきなり全社で実施する必要はありません。まずは一部の新規事業や期間限定プロジェクトで試行し、徐々に範囲を広げていくアプローチが現実的です。重要なのは、社内外の境界を低くし、必要な人材を柔軟に活用できる体制を整えることです。
情報開示については、自社の働き方や人材育成方針を明確に示すことが、優秀な人材を引き付ける最大の武器になります。単なる労働条件の開示にとどまらず、「この会社でどんなキャリアが築けるのか」を具体的に示すことが求められます。
個人が取り組むべき3つのアクション
個人は、専門性の確立、複数の収入源の確保、生涯学習への投資という3つの観点から、自律的なキャリア形成を進めるべきです。
| アクション | 具体的な取り組み | 期待される効果 |
| ①専門性の確立とポータブルスキルの習得 | 特定領域の専門性を磨く、業界を超えて通用するスキル習得、資格・認定の取得 | 転職・キャリアチェンジの選択肢拡大、交渉力の向上 |
| ②複数の収入源を持つ準備 | 副業・兼業の開始、個人事業の試行、営利・非営利の両方での活動 | 一社依存のリスク軽減、多様な働く目的の実現 |
| ③生涯学習への投資 | オンライン教育の活用、職業訓練への参加、異業種交流・コミュニティへの参加 | 環境変化への適応力、やり直し・再挑戦の選択肢確保 |
専門性の確立は、「好きで得意な道」を見つけることから始まります。今の仕事の中で、自分が最も価値を発揮できる領域を見極め、そこに集中投資することが重要です。同時に、その専門性が特定の企業内だけで通用するものではなく、市場全体で価値を持つポータブルスキルであることを意識すべきです。
未来の会社案内が描く2035年の働き方|未来志向の経営戦略
「働き方の未来2035」が示す未来を実現するには、企業が「過去の実績」ではなく「未来の姿」を起点に経営を考える必要があります。ここでは、未来志向の経営戦略としての「未来の会社案内」という発想を紹介します。

「働き方の未来2035」が示す方向性と企業の未来ビジョン
報告書は、企業が「一人ひとりに合った自己実現ができる場」として選ばれる存在になることを求めています。そのためには、企業が自社の未来ビジョンを明確に描き、社員や求職者と共有することが不可欠です。
| 項目 | 従来の会社案内 | 未来の会社案内 |
| 焦点 | 過去~現在の実績 | 未来の顧客・働き方・事業 |
| 内容 | 沿革、事業紹介、代表挨拶 | 未来ビジョン、成長戦略、社員の未来像 |
| 効果 | 現状理解 | 共感・エンゲージメント向上 |
| 活用場面 | 取引先への説明 | 採用、育成、承継、事業構想 |
報告書が描く2035年の働き方では、「企業規模の大きさ」ではなく「チャンスや自己実現の場の提供」が企業の魅力となります。未来の会社案内は、「この会社で働くと、どんな未来が待っているのか」を具体的に示すツールです。それは採用だけでなく、社員の育成、事業承継、新規事業構想など、あらゆる場面で力を発揮します。
社員とともに描く未来の顧客・働き方・事業の芽
未来の会社案内を作るプロセスでは、経営者だけでなく社員全員が参加し、以下の3つの要素を明確にします。
| 要素 | 内容 | 効果 |
| 未来の顧客像 | 5年後、10年後にどんな顧客にどんな価値を提供しているか | 事業の方向性が明確になる |
| 未来の働き方 | 社員がどのように働き、どんなスキルを持っているか | 採用・育成の指針になる |
| 未来の事業の芽 | 新規事業や新サービスの方向性 | イノベーションの土壌ができる |
報告書が示す2035年の社会では、30代以下の経営者の55.3%が事業拡大を志向しており、若い世代ほど未来志向が強い傾向にあります。社員全員で未来ビジョンを共有することで、同じ方向を向いて成長できる組織が実現します。
未来予報株式会社では、中小企業向けに「未来の会社案内」を作成するワークショッププログラムを提供しています。専門ツールを使いながら、未来の顧客像・働き方・事業の芽を可視化し、採用・育成・承継に活きる未来ビジョンを構築します。詳しくは未来の会社案内ワークショップをご覧ください。
まとめ
「働き方の未来2035」は、技術革新を脅威ではなくチャンスと捉え、時間や空間、年齢や性別といった「壁」を取り除き、多様な働き方を可能にする未来を描いています。
報告書発表から9年。テレワークや副業解禁など一部は進みましたが、制度改革や教育改革は遅れています。2035年まで残り11年の今、企業も個人も具体的な行動を始める必要があります。
重要なのは、課題を「現在の延長線上」で捉えるのではなく、「未来を起点」に考えることです。従来の「実績紹介型」から「未来価値提案型」へとシフトすることで、採用・育成・事業承継といった場面で大きな効果が得られます。
未来は、待っているだけでは訪れません。未来を描き、行動することで、はじめて理想の未来が実現します。
あなたの会社の「未来の姿」を、社員とともに描いてみませんか。未来予報株式会社では、中小企業向けに「未来の会社案内」を作成するワークショッププログラムを提供しています。詳しくは未来の会社案内ワークショップをご覧ください。
