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SXSW 2025のオードリー・タン氏のセッションから、市民参加の未来を思索する

Futures Literacyのヒントになる未来のトレンドが集まる世界的なイベントが、私たちが日本代表を務めるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)です。まさに現在、アメリカのテキサス州オースティンで開催されています。
今回は、SXSW2025から市民参加の未来を考えるパネルセッションを速報的にお伝えします。

テクノロジーと市民参加の新しい形

未来のまちづくりにおいて、市民がどれほど主体的に関われるのか?その鍵を握るのはテクノロジーの活用です。世界各国では、革新的な仕組みを通じて市民参加を促進し、より開かれた民主主義を実現しようとする試みが進んでいます。今年のSXSWでは、台湾のオードリー・タン氏とブラジルのレイナルド・レモス氏が登壇し、市民参加型の先進的な取り組みについて語りました。現地のFuturist宮川からのレポートも交えながらお届けします。


SXSW2025セッション「Power To The People : Technology For Citizen Participation(人々に力を与える、市民参加のためのテクノロジー)」

Futuristの宮川です!オースティンからお伝えします。
オードリー・タン氏とは2021年秋のオンラインイベントで一緒に登壇してから、3年半の月日を経てやっと会うことができました!
このセッションではテクノロジーが民主主義を強化し、市民参加を促進する実際の事例が紹介されました。オープンで透明性のある政府をどのように実現するのかのヒントが沢山ありました。

台湾のデジタル民主主義の最前線と、この領域の先進国ブラジル

オードリー・タン氏は、台湾において行政の透明性を飛躍的に高め、市民の参加を促すための数々の革新を実施してきました。その一つがデジタル民主主義ツール「vTaiwan」です。市民がオンラインで政策に意見を述べ、AIが意見を整理し、合意形成を支援するツールです。Uberの台湾進出時に、市民・政府・企業のクロスセクターがvTaiwanを通じて議論し、適切な規制策を決定したそう。
彼女の活動はすでに日本でも多く取り上げられているので割愛しますが、3時間かかっていた所得税の申告を平均3分で終わらせられるようになった税申告のデジタル改革や、オープンガバメント推進など目覚ましい活躍です。
また、根本的な透明性(Radical Transparency)が求めらる米国の政府ですが、オードリー氏は自身のスピーチや会議、雑談などを全て書き起こして公開しているwebサイト「Sayit」を取り上げながらも、行政や政府の取り組みの透明性は高めなければならないと警笛を鳴らしていたのも印象的です。

もう一方のパネリストであるレイナルド・レモス氏は、ブラジルのデジタル民主主義の先進性についても触れました。1980年代まで独裁政権にあったブラジルでは、市民参加型の政治が1980年代後半から続いており、オープンソースのプロジェクトが活発に行われています。このような取り組みが、デジタル民主主義を進化させる重要な要素となっています。

テクノロジーダイバーシティのある未来に向けて

セッションでは、テクノロジーの多様性(Techno Diversity)についても議論が展開されました。日本の都知事選での安野たかひろさんの活動、エストニアのデジタル市民権、インドのデジタルIDであるIndia Stackなど、さまざまな国で進行中の活動が紹介されました。AIの広がりによって、オープンソース活動はますます多様化し、世界中で加速しているという話も印象的でした。

さらに、未来のストーリーテリングの重要性についても触れられました。スタートレックやディズニー、日本の漫画に見られる未来像を交えながら、ディストピアにとらわれない、多様で希望に満ちた未来を描くことが重要だというメッセージが強調されました。これはまさにFutures Literacyにも通じる考え方ですね。
私もいろんな地域における多様性のある未来予報®︎を発信していきたいと思いました。

宮川さん、楽しそうな良い写真と共にレポートしてもらって、ありがとうございました!
リアルで会えてよかったね〜。


SXSW2025で見えた市民参加の未来

私がSXSWにおける市民参加やまちづくりについて定点観測をしてきた10年以上の中で、今年のセッションでは特にFutures Literacyの重要性が強調されていました。

以前の記事でも触れたように、未来ビジョンを策定する際に重要なのは市民活動を巻き込むことです。そして、その中心にはテクノロジーと多様性が大きな役割を果たしており、今後の変革において不可欠な要素となるでしょう。

いままで市民活動の”サポート”ツールとして使われていたテクノロジーが、今やその活動を推進する”原動力”となる時代が到来しています。AIやGovTechといった領域は、市民活動の効率化や透明性の向上に大きく寄与しており、その活用法が多くのセッションで登場していました。
例えばこちらの「GovTech for Good – Tech as a Catalyst for Better Government(GovTech for Good – より良い政府のための技術革新)」というセッションでは、ドイツとアメリカからスピーカーが集まり、GovTechについて議論がされました。各国での「行政・政府」の認識が異なったり、縦割りなどの構造的な問題があるため、それぞれの地域にあわせた形のソリューションが模索されています。そんな中でも、小規模な区域で実験的導入をはじめ、全国に展開していく成功法になるかもしれないバイエルン州やベルリン、ハンブルグなどのアプローチが紹介されました。
英語ですが、下記からセッションの収録を聴くことができます。

また、社会が抱える課題(格差解消、住宅問題、分断など)に対して、単発的な取り組みではなく、共有できる「未来志向」のビジョンが必要だという認識が広がってきていることを感じました。市民活動が未来を見据えたプロジェクトが多く発表され、それらの型が広がり、今後の課題解決に向けた重要な鍵となることが伺えます。

そして、若者世代の価値観を中心にした新たな市民活動のリーダーシップ像が浮かび上がっているというセッションも多く登場しました。従来までの「慈善活動」という枠を超え、若者世代の「価値観を標準化するための連帯」という認識になってきており、それらの実現に向けた動きとして、これからの市民活動をとらえようということが来年はさらに重要なテーマとなりそうです。例えば「Gen Z vs the Gerontocracy: Reclaiming America’s Future(Z世代 vs 老人支配:アメリカの未来を取り戻す)」というセッションでは、世代間を超えたリーダーシップについての議論がされました。特に重要だと感じたのは、従来のプロセスにおけるリーダーになるまでの”時間の長さ”です。気候変動や社会問題解決に対して、そんな悠長に時間を使えないという危機感を若い世代は持っており、生成AIの普及によってその速度感はさらに増していると言います。
時には年長者からリーダーシップを奪う必要さえもあるとも感じているそうです。若者と年長者が協力して新しいシステムを共創していったり、リーダーを「継承」するのではなく「価値創造」を一緒に行なっていくというスタンスが必要だとも議論の中でも盛り上がっていました。若者を単なる「若者代表」としてではなく、機会が与えられた「リーダー」として扱えるかどうかも、プロジェクトとしては非常に重要になってくるでしょう。
世代を超えたインタージェネレーショナルな未来像の構想がこれからも目指されていくといいですね。

このように、SXSW2025では、いくつかのセッションを通じて、これからの社会やまちに対する希望やインスピレーションを感じることができました。

あなたは、未来においてどのような市民参加が望ましいと考えますか?
テクノロジーを活用した新しい参加の形、あるいは、従来のコミュニティのあり方を見直すアプローチなど、ぜひ考えてみてください。

SXSW2025 集中講義

10テーマの2025年の最終情報が学べる未来予報アカデミーの特別動画講座。「まち」の未来も扱っています。

ソガコウタロウ

ソガコウタロウ

Futures Literacy Journal 発起人

未来像{HOPE}をつくる専門会社 未来予報株式会社 aka VISIONGRAPH Inc. aka SXSW Japan Office の 共同代表。未来に関わるプロジェクトをデザインしたり、リサーチしたり、未来の予報を作ったりします。 乗り鉄 / キャンプ / サウナ / 音楽 / 旅行 / ヨガ / 家庭菜園 などが趣味ワード。HeとでもTheyとでもお呼びください!

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