ディープフェイク詐欺が突きつけるリアル | 未来の事件 – Future Crimeから考える、今を生きるサバイバル術

このシリーズは、Podcast 「予報犯ラジオ|Future Crime Files」のエピソードをベースにしています。

「映像は嘘をつかない」──かつてはそう信じられていました。しかしAIが進化した今、その信頼は揺らぎつつあります。2025年、私たちはすでにディープフェイクを活用した詐欺のリスクに直面しています。
本記事では、未来に起こり得る“犯罪のシナリオ”を手がかりに、フューチャリストの視点から「今を生き抜くためのサバイバル術」を提言します。

未来犯罪のシナリオ:消えた息子からのSOS

ある晩、ITに不慣れな父・涼平のもとにビデオ通話が届きます。画面に映るのは、海外で暮らす息子・隼人。声も姿も、表情の焦りも確かに息子そのもの。背景にはニューヨークのホテルの夜景、車のクラクションまでリアルに響いています。
「お父さん、今すぐ3000万円を送ってほしい。投資先の資産が不正利用されて、このままじゃ逮捕される。」
隼人の目の奥に浮かぶ光に父は信じます。映像は嘘をつかないと。しかしそれは、AIが生成した“幻影”。父の微細な表情反応を読み取って声色を変え、リアルタイムで映像を調整する高度なディープフェイクによる詐欺でした

Podcast | 予報犯ラジオ Future Crime Files – Presented by 未来予報研究会 ep01 : AI詐欺は”心霊写真”の夢をみるか より

歴史を振り返る:19世紀の「心霊写真詐欺」

フューチャリストの視点から見れば、最新技術が悪用される構造は繰り返されています。
1890年代、写真機が普及し始めたころ、人々は「写真に魂が抜かれる」と畏れを抱いていました。その理解不足に便乗し、心霊写真詐欺が横行したのです。

死者の霊が写っているように細工した写真を高額で販売し、遺族に「亡き人があなたを見守っている」と信じ込ませる。第一次世界大戦後には、家族を失った人々の切実な願いを利用して、心霊ビジネスが巨大な市場へと育ちました。

写真が「絶対的な証拠」とされた当時、疑う術を持たない人々が容易に騙されてしまったのです。

現代の気づき:技術が信頼を裏切るとき

今日の社会も同じ罠に陥ろうとしています。
フューチャリストとして、私は次の3つを強調したいと思います。

  • 新技術の理解不足は最大のリスクになる
    写真を信じた19世紀の人々のように、現代も「映像と声は真実」という思い込みが残っています。
    この常識が揺らぐ時、社会全体が不安定になります。
  • 人間の感情は常に攻撃対象となる
    父が3000万円を差し出そうとしたのは、理性ではなく「息子が助けを求めている」という感情を利用されたから。テクノロジー犯罪の本質は、常に“人間心理の隙”を突くことにあります。
  • AIと詐欺師の追いかけっこが始まっている
    ディープフェイク検出AIが登場していますが、それを回避する生成技術も同時に進化しています。
    つまり、テクノロジーだけに解決を委ねることは難しそうです。

ディープフェイクの先進事例:現実はすでに始まっている

未来予報データベースから、いくつかのディープフェイクの先進事例を見てみましょう。

Reality Defender
インターネット上の写真や映像からディープフェイクを検出して不正を防ぐサービス
設立年:2021   本社所在地 :United States

AIで生成されたコンテンツは、詐欺や虚偽の情報拡散に悪用されるケースが増えており、その脅威は急速に広がっています。こうした問題に対し、企業や政府、プラットフォーム向けに開発された、AIによる偽造コンテンツを検出し保護するツールがReality Defenderです。複数のAIモデルを活用し、オーディオ、ビデオ、画像、テキストにおけるディープフェイクをリアルタイムで検出します。

UneeQ
ディープフェイクを活用したチャットボット
設立年:2021   本社所在地 :United States

バーチャルヒューマン型のチャットボット AIがリアルな人間の表情までを再現することで、従来のャットボットではできなかった感情的な体験が可能に。実際に人間がいるのかAIなのか、画面越しでは判別がつかないほどに技術が進化しています。 日本でも2020年にデジタルヒューマン社がライセンスを取得しサービスを展開。単なるチャットボットではない “人感”を機械が担うサービスが、今後日本でも広がっていくでしょう。

すでに世界では、政治・経済・エンタメといった分野でディープフェイクの利用が確認されています。
これらは未来犯罪の“予兆”であり、近い将来私たち自身の生活を直撃するリスクが高まっていることを示しています。

未来への提言:アナログとエラーを武器にせよ

では、私たちはどう備えるべきか。ここでフューチャリストとして提案したいのは、次の3点です。

  1. アナログ認証を軽んじないこと
    デジタルが信用できない時代だからこそ、対面確認やフィルムカメラの記録など、人間同士が直接確かめ合える仕組みが活きる場面があるかもしれません。
  2. “不完全さ”を本人確認の鍵にすること
    これからは「本物そっくり」が信頼の証拠になりません。むしろ人間特有のぎこちなさや、癖・エラーこそが本人確認の基準になるかもしれません。
  3. 学習させない領域を持つこと
    生活や感情の全てをAIに預けてしまえば、模倣も簡単になります。あえて学習させない情報やルーティンを持ち、AIが再現できない“余白”を残すことが重要です。

まとめ:未来を生き抜くために

ディープフェイク詐欺の物語と心霊写真詐欺の歴史は、130年を超えて驚くほど似通っています。
新しい技術が登場するとき、必ず「信じたい気持ち」と「理解不足」が狙われるのです。

未来を生き抜く鍵は、テクノロジーに盲信しないこと
そして、人間らしい不完全さをあえて武器にすること

2030年には「本物そっくり」ではなく、「どんなミスをする人か」が本人確認の基準になるかもしれませんんね。
未来を恐れるのではなく、未来に備えて“人間らしさ”を戦略的に活かすためには何ができるのか。

予報犯ラジオを是非聴いていただいて、一緒に考えていきましょう!

Podcast 予報犯ラジオ

未来に起こるかもしれない“架空の事件“から、
過去と現在を読み解き、明日を生き抜く知恵を見つける思考実験ポッドキャスト

宮川 麻衣子

宮川 麻衣子

VISIONGRAPH Inc. Futurist

VISIONGRAPH Inc.代表取締役 / フューチャリスト / SXSW Japan代表。フューチャリストとして12年に渡るSXSW分析レポートの発信や様々な未来像を提示。SXSW2020 / 2022オフィシャルスピーカー他講演多数。 歌手でもあります。

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