中学生でもわかる「未来洞察」入門【5つの道具で未来をつくる】〜未来を見る方法〜

10年後の世界を想像できますか?
「今使っているスマホは、どうなっているんだろう?」
「自分はどんな仕事をしているんだろう?」
「地球の温暖化は大丈夫?」
考え始めると、ワクワクしますが、少し不安にもなるかもしれませんね。

「未来のことなんて、誰にも分からない」と思うかもしれません。それは半分本当です。でも、未来はただ待っているだけでなく、自分たちの手で「つくる」ことができるのです。

この記事で紹介する「未来洞察(みらいどうさつ)」は、そのための武器になります。未来を考えるための「冒険のコンパス」のようなものだと思ってください。
この記事を読み終わるころには、あなたも未来を考える達人になっているはず――。

未来洞察とは?

「未来予測」と「未来洞察」は違う?占いじゃないの?

まず、「未来洞察」とよく似た言葉に「未来予測」があります。この二つは、実は全く違うものです。

  • 未来予測:専門的な知識から、「たぶんこうなるだろう」と確率が高い未来を“あてる”ことです。
  • 未来洞察:いま起きている変化や兆しを手がかりに、「この変化が広がったら?」「別の変化と重なったら?」と意味を考え、複数の未来の可能性を探索することです。「こうなったらいいな」「こんな未来はイヤだな」と、いろいろなパターンの未来を想像して、「最高の未来」にするために今から何をしよう?と“考える”ことだともいえます。

大切なのは、「どちらが正しいか」を決めることではありません。

つまり、未来洞察は占いではありません。未来を自分たちの手で面白くしていくための作戦会議なのです。
例えば、ドラえもんの道具。「どこでもドア」や「タケコプター」も、作者の藤子・F・不二雄先生が「こんな未来があったら最高だな!」と考えた、一種の「未来洞察」から生まれた発明なのかもしれませんね。

将来についてわかっていることを理解しながら、まだ決まっていない可能性にも目を向けてみる。そうすることで、未来を知るだけではなく、未来を使って現在の選択肢を考えることができます。

なぜ、未来洞察が必要なの? やる意味って?

未来洞察ができるようになると、これから先、あなたにとって大きな力になります。それには、大きく3つの理由があります。

  • 変化がものすごく激しい時代だから 

AI(人工知能)がどんどん賢くなったり、世界中で環境問題が深刻になったり。今の社会のルールや常識が、10年後にはガラッと変わっているかもしれません。そんな時代だからこそ、変化に驚くだけでなく、変化を楽しみ、乗りこなしていく力が必要なのです。

  • 将来の夢や目標のヒントが見つかるから

「自分の『好き』なことや『得意』なことって、将来どう役立つのかな?」なんて考えたことはありませんか。未来洞察を使えば、自分の好きなことが未来でどんなふうに活躍できるか、想像しやすくなります。新しい夢や目標を見つけるきっかけになるはずですよ。

  • むずかしい社会問題を解決するアイデアにつながるから

ニュースで聞くSDGs(エスディージーズ)のように、少しむずかしそうな問題も、未来洞察を使えば「自分だったらどうするかな?」と自分ごととして考えられるようになります。あなたの考えたアイデアが、未来の世界を救うかもしれないのです。

未来を考えるための便利な「5つの道具(フレームワーク)」

「なんだか面白そうだけど、自分にできるかな?」と思うかもしれませんね。大丈夫。ここでは、未来を考えるための便利な「5つの道具」を紹介します。この道具の使い方を知れば、誰でも未来洞察にチャレンジできます。

未来を考える方法は、この5つだけではありません。また、必ず1→2→3→4→5の順番で使わなければならないわけでもありません。

この記事では、初めて未来について考える人が試しやすいように、この5つをひとつの学習用の組み合わせとして紹介します。
未来像を考えてからもう一度変化を調べたり、バックキャスティングの途中で「そもそも望む未来はこれでいい?」と戻ったりしても構いません。

道具を使いながら、未来と現在を行き来してみましょう。

【道具1】スキャニング
未来の「タネ」を見つけよう

まずは、あなたの身の回りにある「あれ?」とか「最近これをよく見るな」という小さな変化を探してみましょう。これが未来を大きく変えるかもしれない「タネ」になるのです。

例えば、「最近、お店のレジがセルフレジばっかりだな」 「好きなVTuberがテレビに出てる!」 「学校でタブレットを使うのが当たり前になったな」

こんな、ささいなことでOKです。

【やってみよう!】ニュースやSNS、普段の学校生活や友達との会話の中から、「未来のタネ」になりそうな変化を3つ、ノートに書き出してみましょう!

【道具2】What if
「もしも…」で未来を広げよう

スキャニングで見つけた「タネ」を使って、「もしも、○○が当たり前になったら、どうなるだろう?」と考えてみるのが、この道具です。この「もしも…」という問いを繰り返すと、一つの変化が、ドミノ倒しのように次の変化を引き起こすことに気づけます。

例えば、「もし、すべての買い物がキャッシュレスになったら?」と考えてみると…

→ 直接的な影響:お財布がいらなくなる。
→ 間接的な影響:スマホをなくすと何もできなくなる。新しいセキュリティが必要になるかも。
→ さらなる影響:おこづかいの渡し方が変わる?お金の価値観も変わるかもしれない。

このように、想像をどんどん広げていくことができます。

【やってみよう!】あなたが見つけた「タネ」を使って、「もしも…」の問いを3回繰り返してみましょう。どんな影響が考えられますか?

【道具3】ビジョニング
いろんな未来から「望む方向」を選ぼう

「もしも…」で想像を広げると、いろんな未来が見えてきます。実は、未来にはいくつかの種類があります。

  • 起こるだろう未来 (Probable):人口が減る、みたいに、ほぼ確実に来る未来。
  • 起きてもおかしくない未来 (Plausible):ほとんどの車が電気自動車になる、など、多くの人が納得できる未来。
  • 起きるかもしれない未来 (Possible):空飛ぶタクシーが普通になって時刻表にとらわれない移動ができる、みたいに、想像力をふくらませると「ありえるかも?」と思える未来。

そして、一番大切なのがこれです。

  • のぞましい未来 (Preferable):いろいろな未来の中で、自分や自分たちにとって、どんな状態を望ましいと思うか
    という視点です。

「のぞましい未来」は、誰にとっても共通する「最高の未来」という意味ではありません。同じ未来を見ても、立場や価値観によって「いい」と感じることは変わります。

ビジョニングでは、いろいろな未来の可能性を眺めながら、
「自分は何を大切にしたい?」
「誰にとって、どんな未来が望ましい?」
と考えてみます。

答えを一つに決めることより、自分がどんな価値観を持って未来を見ているのかに気づくことが大切です。

【道具4】シナリオ・プランニング
未来を物語にして具体的に考えよう

シナリオ・プランニングでは、未来についての前提を組み合わせながら、異なる未来の状況をいくつかの物語として具体的に考えます。

たとえば、テクノロジーの進み方や、人々の価値観、社会のルールが違えば、同じテーマでもまったく異なる未来が考えられます。
物語にしてみると、
「その未来では、誰がどんな一日を過ごしている?」
「便利になった一方で、困る人はいない?」
「いま当たり前のものは、何が変わっている?」
といったことまで想像しやすくなります。

例えば、「テクノロジーが進んで、人々が楽観的な未来」のシナリオは…

テクノロジーと共に築く持続可能な未来
AIが人間の最高のパートナーになり、環境問題も解決。人々は創造的な活動に時間を使えるようになり、毎日が文化祭のようにやりたいことに没頭できる楽しい世界。

【やってみよう!】あなたが選んだ「のぞましい未来」を舞台にして、そこに住む未来人の一日を短い物語にしてみましょう。

【道具5】バックキャスティング
未来から逆算して「今」を考えよう

バックキャスティングでは、考えてみたい未来像をいったん未来側に置き、そこから現在へ戻りながら、
「その未来に近づくには、途中で何が変わっている必要がある?」
「今からできることには、どんな選択肢がある?」
と考えます。

未来を絶対のゴールとして固定するというより、未来側から現在を見直すための方法だと考えてみてください。
途中で「やっぱり別の未来も考えてみたい」と思ったら、前の道具へ戻って構いません。

例えば、「5年後に海外で活躍したい」という「のぞましい未来」があるなら…
→ 5年後:海外にいる
→ 3年後:英語がペラペラになっている必要がある
→ 1年後:英語の勉強を本格的に始めている
→ 今すぐ:まずは、好きな海外の映画を字幕なしで見てみることから始めよう!
というように、やるべきことが具体的になります。

【やってみよう!】あなたが作った「最高の未来の物語」を実現するために、1年後、5年後、10年後の自分は何をしているか、「未来年表」を作ってみましょう。

バックキャスティングについては、以下の記事でも解説しています。
【図解】「バックキャスティング」と「フォアキャスティング」を中学生でもわかるように解説!

【ワークショップ】5つの道具を使って未来を描いてみよう!

やり方がわかったら、早速トレーニングしてみましょう。ここでは練習として、「10年後のスマホ」をテーマに5つの道具を順番に使ってみます。これは未来洞察の唯一の手順ではなく、5つの道具を体験するための学習例です。

例:「10年後のスマホ」はどうなってる?

【ステップ1:スキャニング】

まずは、スマホに関する「未来のタネ」を探します。

  • タネ1: 折りたためるスマホや、腕に巻けるスマホが登場している
  • タネ2: スマートウォッチやスマートグラスなど、身につけるデバイスが増えてきた
  • タネ3: 音声やジェスチャーでの操作が当たり前になってきた

【ステップ2:What if】

今回は「もしも、スマホが『板』じゃなくなったら?」という「もしも」で考えてみます。

  •  直接的な影響: 手で持つ必要がなくなる。いつでもどこでも、ハンズフリーで情報にアクセスできる。
  •  間接的な影響: スマホ画面に集中して周りが見えなくなる「歩きスマホ」問題が解決するかも?でも、常に情報が表示されることで、逆に休まる時間がなくなるかもしれない。

【ステップ3:ビジョニング】

ここで、道具3の考え方を使ってみましょう。「スマホ」の未来にも、いろいろな可能性があります。

  • 起こるだろう未来 : 今よりもっと薄く、軽く、バッテリーが長持ちするスマホ。
  • 起きてもおかしくない未来: 折りたたみ式が主流になり、普段は小さく、使う時に大画面に広げるスマホ。
  • 起きるかもしれない未来 : メガネやコンタクトレンズがスマホ代わりになり、見た風景に情報を重ねて表示してくれる。

これらの未来を眺めながら、自分にとっての「のぞましい未来 (Preferable)」を考えます。例えば、「スマホに時間や注意を奪われるのではなく、現実の世界をもっと楽しむのを手伝ってくれる未来がいいな」と決めたとします。これが、あなたにとっての「自分が望ましい未来」です。

【ステップ4:シナリオ・プランニング】

自分が望む未来を舞台に、1日の物語を想像します。

修学旅行で訪れた京都。スマートグラスをかけると、目の前のお寺の歴史が字幕で浮かび上がってくる。道に迷っても、視界の隅に行き先までの矢印がそっと表示されるので、下を向く必要がない。海外からの観光客に話しかけられても、AIがリアルタイムで通訳してくれるので、会話が弾む。スマホの画面を見る時間が減った分、自分の目で見る景色や、人との会話を思いっきり楽しめた一日だった。

【ステップ5:バックキャスティング】

この未来を実現するために、今できることは何でしょうか?

  • 10年後: スマートグラスが普及し、現実世界とデジタル情報が自然に融合している。
  • 5年後: 今のスマホでもできるAR(拡張現実)の機能がもっと進化し、生活の様々な場面で使われるようになる。
  • 1年後: スマホの音声アシスタントや、AR機能をもっと積極的に使ってみる。
  • 今すぐ: 最新のテクノロジーに関するニュースにアンテナを張る。自分の周りの人がスマホをどんな風に使っているか観察してみる。

「未来の食事」「未来の学校」「未来の家族」など、好きなテーマを決めて、5つの道具を使ってみましょう。ノートに書き出して、友達や家族と話してみると、もっと面白いアイデアが生まれるかもしれませんよ!

未来を考える道具を、まず使ってみよう

未来を考えるときに、大切なのは「正解の未来を当てること」ではありません。

身の回りの変化に気づく。
「もしも?」と可能性を広げる。
自分が何を望んでいるのか考える。
未来を物語として具体的に想像する。
そして未来側から、もう一度いまを見てみる。

今回紹介した5つの道具は、そのための入り口です。

全部を完璧に使う必要もありません。気になったものをひとつ使って、友達や家族と未来について話してみるだけでも、いままでとは違う見方が見えてくるかもしれません。

未来はひとつに決まっていません。だからこそ、いろいろな可能性を考えながら、「では、自分はいま何を大切にしたい?」と問い直してみましょう。

NEXT QUESTION

未来を考えるとき、どの方法を、何のために使う?

未来を考える道具は、数が多ければよいわけではありません。
「何を知りたいのか」「何を問い直したいのか」によって、使う方法や組み合わせ方も変わります。

井上 薫

井上 薫

Futures Literacy Journal 編集者

編集・ライター 実用書の出版社にて書籍の企画・編集を行う。その後、福祉・介護系のメディアにてWebの編集・取材を担当。2022年にフリーランスとして独立。 趣味は、路上観察と喫茶店めぐり。 特技は、Excelと皿洗い。

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