「インクルーシブ」という言葉を、企業や教育、まちづくりの現場で耳にする機会が増えています。
インクルーシブ教育。
インクルーシブデザイン。
インクルーシブな職場。
インクルーシブな社会。
どれも大切そうな言葉ではありますが、「ダイバーシティ」や「多様性」と何が違うのか、少しわかりにくいと感じる人も多いかもしれません。
インクルーシブとは、単に多様な人がいる状態を指すだけではありません。
異なる立場や価値観、身体性、文化、経験を持つ人たちが、排除されることなく参加し、意思決定や創造に関われる状態を意味します。
つまり、インクルーシブとは「そこにいることを許される」だけではなく、「ともにつくる一員として関われる」ことです。
未来を考えるうえでも、この視点はとても重要です。
なぜなら、未来は一部の専門家や強い立場の人だけが決めるものではないからです。
さまざまな人の経験や違和感、願いを持ち寄ることで、未来はより豊かに描くことができます。
未来を誰が語れるのか。
誰の経験が反映されているのか。
誰の違和感が、まだ言葉になっていないのか。
誰が「自分には関係ない」と感じてしまっているのか。
こうした問いを持つことが、インクルーシブな未来づくりの出発点になります。
この記事では、インクルーシブとは何か、ダイバーシティや多様性との違い、そして未来の共創社会においてなぜインクルーシブな視点が必要なのかを解説します。
この記事でわかること
この記事では、以下のようなことを紹介します。
- インクルーシブとは何か
- ダイバーシティ・多様性・インクルージョンとの違い
- なぜ今、インクルーシブが重要なのか
- インクルーシブは「やさしさ」だけの話ではない理由
- 企業・教育・まちづくりにおけるインクルーシブ
- インクルーシブな場をつくるための視点
- 未来予報®︎の視点から見た「インクルーシブ」の意味
インクルーシブとは?
インクルーシブとは、さまざまな違いを持つ人たちが排除されず、それぞれの力や視点を活かしながら参加できる状態のことです。
英語の “inclusive” には、「包括的な(包摂)」「包み込む」「排除しない」といった意味があります。
ただし、インクルーシブを「誰でも受け入れること」とだけ理解すると、少し不十分です。
本質的には、単に受け入れるだけではなく、参加できるように仕組みや場を変えていくことが重要になります。
たとえば、ある会議に多様なメンバーが参加していたとします。
性別、年齢、職種、国籍、障がいの有無、経験や価値観が異なる人たちが集まっている。
これは一見、多様な場に見えます。
しかし、実際には一部の人だけが発言し、意思決定も限られた立場の人だけで行われているとしたら、その場は本当にインクルーシブだと言えるでしょうか。
インクルーシブな場では、単に多様な人が存在しているだけではなく、その人たちが安心して意見を出し、自分の経験や違和感を共有し、意思決定や創造に関われることが大切です。
つまり、インクルーシブとは「多様性がある状態」から一歩進んで、
多様な人が実際に関われる状態をつくる考え方なのです。

ダイバーシティ・多様性・インクルージョンとの違い
インクルーシブと近い言葉に、「ダイバーシティ」「インクルージョン」があります。
それぞれの言葉は重なり合っていますが、少しずつ意味が異なります。
| 言葉 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| ダイバーシティ | 多様な人や属性が存在していること | 違いがある状態 |
| インクルージョン | 多様な人が排除されず、参加できる状態 | 違いを活かす仕組み |
| インクルーシブ | 排除せず、参加と創造を可能にする考え方・状態 | ともにつくれる状態 |
ダイバーシティは、「どんな違いがあるか」に注目する言葉です。
一方で、インクルージョンやインクルーシブは、「その違いを持つ人たちが、実際に参加できているか」に注目します。
たとえば、企業で女性や若手、外国籍人材、障がいのある人など、多様な人材を採用していたとしても、その人たちが意思決定に関われず、発言しにくく、評価制度も特定の働き方だけを前提にしている場合、ダイバーシティはあってもインクルーシブとは言いにくいでしょう。
同じように、まちづくりの場で住民説明会を開いていたとしても、参加できる人が限られていたり、専門用語が多すぎて意見を出しにくかったり、結果的に一部の声だけが反映される場合、それはインクルーシブな参加とは言えません。
インクルーシブとは、違いをただ「認める」だけではありません。
その違いが場の中で意味を持ち、意思決定や創造に活かされる状態をつくることなのです。
インクルーシブとは、“ラベル”を越えて未来に参加すること
インクルーシブを考えるうえで大切なのは、「多様な人がいるかどうか」だけではありません。
その人たちが、どんなラベルによって見られているのか。
そして、そのラベルによって、どんな参加の機会や可能性が狭められているのかを見ることです。
性差、性自認、性的嗜好、年齢、地域、学歴、所得、国籍、障がいの有無、働き方、家族のかたち。
私たちは、さまざまな違いを持っています。
本来、それらの違いは一人ひとりの経験や視点の豊かさにつながるものです。
しかし、社会や組織の中では、ときにそれらが“ラベル”として扱われ、その人の可能性を狭めてしまうことがあります。
「若いからわかっていない」
「地方だから遅れている」
「専門家ではないから語れない」
「障がいがあるから支援される側だ」
「子育て中だから重要な仕事は任せにくい」
「この地域の人ではないから関係ない」
こうした見方は、知らないうちに、誰かを未来づくりの場から遠ざけてしまいます。
インクルーシブとは、そうしたラベルによる偏見を越えて、一人ひとりが自分らしく参加できる状態をつくることです。
それは、単に「受け入れる」ことではありません。
一人ひとりが、自分の経験や違和感を持ち寄り、ともに未来をつくる一員として関われる状態をつくることです。
未来予報®︎では、未来を一部の専門家だけが予測するものではなく、さまざまな人が自分ごととして考え、選び取っていくものとして捉えています。
だからこそ、インクルーシブな視点は欠かせません。
未来は、誰が参加できるかによって変わります。
そして、誰が参加できていないかを問い直すことから、より豊かな未来像は始まります。
なぜ今、インクルーシブが重要なのか
インクルーシブという考え方が重要になっている背景には、社会の複雑化があります。
価値観は多様化し、働き方も暮らし方も一人ひとり異なっています。
家族のかたち、恋愛のかたち、学び方、移動の仕方、健康への向き合い方、地域との関わり方も、かつてのように一つの標準では語れなくなっています。
こうした時代に、ひとつの視点だけで商品やサービス、制度、まちの未来を考えることには限界があります。
たとえば、あるサービスが「平均的な利用者」を想定してつくられていたとします。
しかし、その平均の外側には、使いにくさを感じている人や、そもそも参加できていない人がいるかもしれません。
高齢者にとって使いづらい。
子育て中の人には時間が合わない。
性的マイノリティには当てはまらない。
障がいのある人には導線が複雑すぎる。
若い世代には前提となる価値観が合わない。
外国にルーツを持つ人には情報が届いていない。
こうした「使いにくさ」や「参加しにくさ」は、単なる個別対応の問題ではありません。
社会や組織が、どんな人を前提に設計されているのかを映し出すサインでもあります。
インクルーシブな視点は、その前提を問い直します。
誰が参加できているのか。
誰の声が届いていないのか。
誰にとって当たり前ではないのか。
誰の経験が、まだ設計に反映されていないのか。
こうした問いを持つことで、企業や組織、地域は、より多くの人にとって意味のある未来を考えられるようになります。
インクルーシブは「やさしさ」だけの話ではない
インクルーシブという言葉は、ときに「やさしい社会」や「配慮」と結びつけて語られます。
もちろん、誰かを排除しないことや、困っている人を支えることは大切です。
しかし、インクルーシブは単なるやさしさや福祉の話にとどまりません。
インクルーシブな視点は、企業や社会にとって、創造性やイノベーションにもつながります。
なぜなら、これまで見落とされてきた人の経験や違和感の中に、新しいサービスや制度、表現、まちづくりのヒントがあるからです。
たとえば、障がいのある人の使いやすさを考えて生まれたデザインが、結果的に多くの人にとって便利なものになることがあります。
子育て中の人の移動のしにくさに向き合うことで、高齢者や観光客にもやさしいまちの設計が見えてくることがあります。
若い世代の働き方への違和感を聞くことで、組織全体の働き方を見直すきっかけになることもあります。
インクルーシブとは、誰かを特別扱いすることではありません。
むしろ、これまで「標準」とされてきた前提を問い直し、より多くの人が関われる可能性を広げることです。
それは、未来の社会を考えるうえでの重要な創造の方法でもあります。
インクルーシブな共創とは、違いを“配慮”ではなく“創造の素材”にすること
インクルーシブという言葉は、「配慮」や「支援」と結びつけて語られることがあります。
もちろん、参加しにくい人の障壁を取り除くことは重要です。
情報へのアクセス、移動、言語、時間、心理的安全性など、参加を妨げる条件は丁寧に整える必要があります。
しかし、インクルーシブは配慮だけの話ではありません。
違いを、未来をつくるための創造の素材として扱うことでもあります。
たとえば、ある未来シナリオを見たときに、ある人はワクワクし、別の人は不安を感じるかもしれません。
ある人にとって便利なサービスが、別の人にとっては排除や監視のように感じられるかもしれません。
ある人にとって当たり前の働き方が、別の人にとっては参加しにくい仕組みかもしれません。
その違いを「意見のばらつき」として処理してしまうと、未来の可能性は狭くなります。
むしろ、
「なぜその人は不安を感じたのか」
「その違和感は、誰の経験を映しているのか」
「この未来は、誰にとって開かれていて、誰にとって閉じているのか」
「その違いから、どんな新しい問いが生まれるのか」
と問い直すことで、より豊かな未来像が見えてきます。
インクルーシブな共創とは、全員の意見を単純に足し合わせることではありません。
異なる経験や違和感を持ち寄り、そこから新しい問いを立ち上げることです。
違いは、調整すべき問題である前に、未来を考えるための素材です。
インクルーシブな場では、誰かの違和感が、次のサービスや制度、まちづくり、働き方を考える入口になります。
企業におけるインクルーシブ
企業におけるインクルーシブは、人材採用や制度設計だけの話ではありません。
もちろん、多様な人材を採用することは重要です。
しかし、それだけでは不十分です。
本当に重要なのは、多様な人材が組織の中で声を出し、意思決定に関わり、自分らしく働きながら価値を発揮できるかどうかです。
たとえば、次のような観点が考えられます。
- 会議で発言しやすい空気があるか
- 意思決定が一部の人に偏っていないか
- 育児・介護・病気・障がいなど、異なる生活条件を持つ人が働き続けられるか
- 評価制度が特定の働き方や成果の出し方だけを前提にしていないか
- 若手やマイノリティの違和感が組織の学びとして扱われているか
インクルーシブな組織では、違いは問題ではなく、組織を更新するための資源になります。
未来を考える企業にとって、これはとても重要です。
なぜなら、これからの市場や社会の変化は、ひとつの部署や世代、専門性だけでは捉えきれないからです。
多様な人の視点を活かせる組織は、まだ見えていない顧客のニーズや、社会の変化に気づきやすくなります。
そして、インクルーシブな組織では、未来の話が経営層や一部の企画部門だけのものになりません。
現場の違和感、若手の価値観、顧客接点で見える変化、生活者としての実感。
そうした多様な視点が、未来を考える材料になります。
教育におけるインクルーシブ
教育においても、インクルーシブな視点は重要です。
インクルーシブ教育という言葉は、障がいのある子どももない子どもも、ともに学ぶことを指して使われることが多くあります。
しかし、より広く見れば、インクルーシブな教育とは、一人ひとりの違いを前提にした学びの場をつくることです。
子どもたちは、それぞれ異なる得意・不得意、関心、家庭環境、文化的背景、身体的・心理的特性を持っています。
にもかかわらず、学びの場がひとつの正解やひとつのペースだけを前提にしていると、そこに合わない子どもたちは「できない子」として扱われてしまうことがあります。
インクルーシブな教育では、「同じようにできること」だけを目指すのではありません。
それぞれの子どもが、自分の力を発揮できる条件を考えます。
それは、未来人材育成においても重要です。
不確実な時代に必要なのは、全員が同じ答えを覚えることではありません。
異なる視点を持ち、自分の違和感や関心を出発点にしながら、他者とともに問いを深める力です。
インクルーシブな学びは、未来を自分ごととして考える力を育てる土台になります。
まちづくりにおけるインクルーシブ
まちづくりにおいて、インクルーシブな視点はますます重要になっています。
まちは、さまざまな人が暮らし、働き、移動し、学び、遊ぶ場所です。
年齢、身体の状態、家族構成、所得、国籍、生活リズム、地域との関わり方も、人によって異なります。
それにもかかわらず、まちの計画や制度が一部の人の利用を前提にしていると、参加しにくい人や使いにくい人が生まれます。
たとえば、平日昼間の説明会に参加できる人だけの声で、地域の未来を決めてよいのでしょうか。
専門用語が多い資料を読める人だけが、まちづくりに関われるのでしょうか。
移動が難しい人、子育て中の人、外国にルーツを持つ人、若者、声を上げることに慣れていない人たちは、どのように参加できるのでしょうか。
インクルーシブなまちづくりでは、誰がその場にいないのかを考えることが重要です。
参加している人の声だけでなく、参加できていない人の存在にも目を向ける。
すでに声の大きい人だけでなく、まだ言葉になっていない困りごとや願いを拾い上げる。
そうすることで、まちの未来はより多くの人にとって関われるものになっていきます。
未来のまちづくりにおけるインクルーシブ:触れる地図と文化回廊
インクルーシブな未来づくりを考えるうえで、まちづくりはとてもわかりやすい領域です。
まちは、さまざまな人が暮らし、働き、移動し、学び、遊ぶ場所です。
だからこそ、誰がまちの未来を考える場に参加できるのかが問われます。
未来予報®︎では、世界各国の実践やSXSW PanelPicker®︎のような場に集まるアイデアを収集しています。
たとえば、「Tangible Placemaking」という未来予報の発想の起点になったのは、住民が“触れる地図”を使って、まちの未来をシミュレーションする先進事例からでした。
街路樹やベンチの配置を動かすと、路面温度や人の流れが変わり、住民自身がまちの未来を体感しながら考えられる。
これは、インクルーシブな市民参加の可能性を示しています。
専門用語の多い資料を読める人だけが参加するのではなく、子ども、高齢者、専門家ではない住民、行政、企業が、同じ地図を触りながら話せる。
まちの未来を、頭で理解するだけでなく、手で動かし、目で見て、体感しながら考えられる。
そうした道具があることで、未来づくりに参加できる人の範囲は広がります。
また、「Cultural Corridor」という未来予報では、境界や高架下のような場所が、異なる文化をつなぐ回廊へと変わる未来予報をつくりました。これも実在するプロジェクトから発想しました。
移民が多く住む地域の境界が、分断の線ではなく、複数の言語、音楽、食、店、物語が交わる場になる。
ここで重要なのは、「違い」をなくすのではなく、違いが交わる場所をつくることです。
インクルーシブなまちとは、すべての人を同じように扱うまちではありません。
異なる文化や背景、身体性、生活リズムを持つ人たちが、それぞれの違いを消さずに関われるまちです。
未来のまちづくりにおいて、インクルーシブとは「誰一人取り残さない」という理念だけではありません。
誰がまちを語る場に参加できるのか。
どんな道具があれば、専門家ではない人も未来を考えられるのか。
境界や余白を、分断ではなく出会いの場に変えられるのか。
そうした問いを持つことなのです。
インクルーシブな場をつくるための3つの視点
インクルーシブな社会や組織は、理念を掲げるだけでは実現しません。
実際に人が参加しやすくなるための場の設計が必要です。
ここでは、インクルーシブな場をつくるための3つの視点を紹介します。
1. 「誰がいないのか」を考える
インクルーシブな場づくりの第一歩は、そこに誰がいるかだけでなく、誰がいないのかを考えることです。
会議やワークショップ、説明会、プロジェクトのメンバーを見たときに、参加している人だけを見るのではなく、参加していない人に目を向けます。
誰の声がまだ聞こえていないのか。
誰にとって、この場は参加しにくいのか。
誰の経験が、意思決定に反映されていないのか。
この問いを持つだけで、場の見え方は大きく変わります。
未来を考える場でも同じです。
未来について話している人が、特定の専門家や特定の世代、特定の立場に偏っていると、見えてくる未来も偏ります。
未来を豊かに描くためには、まだその場にいない人の視点を想像することが大切です。
2. 「参加できる条件」を整える
参加を呼びかけるだけでは、インクルーシブな場にはなりません。
本当に参加できる条件を整える必要があります。
たとえば、時間帯、場所、言葉の使い方、情報の出し方、オンライン参加の有無、発言の方法など、参加のしやすさはさまざまな要素によって変わります。
まちづくりの場であれば、説明会だけではなく、日常の中で意見を出せる仕組みが必要かもしれません。
企業の会議であれば、発言が得意な人だけでなく、書くことで考えを出しやすい人のための方法が必要かもしれません。
教育の場であれば、同じスピードや同じ表現方法を前提にしない学び方が必要かもしれません。
インクルーシブな場づくりとは、参加する人に努力を求めるだけではありません。
場そのものを変えていくことです。
3. 違いを“調整すべき問題”ではなく“創造の素材”にする
インクルーシブな場では、違いを単に調整すべき問題として扱うのではなく、創造の素材として扱います。
異なる意見や価値観が出てくると、場は少し複雑になります。
合意形成にも時間がかかるかもしれません。
しかし、その違いの中に、新しい問いや可能性が隠れています。
たとえば、あるサービスに対して「使いやすい」と感じる人と、「使いにくい」と感じる人がいたとします。
その違いを単なる不満として処理するのではなく、「なぜそう感じるのか」を探ることで、設計の前提が見えてきます。
未来を考える場でも、違いは大切です。
「この未来にワクワクする人」と「不安を感じる人」がいる。
「便利になる」と感じる人と「置いていかれる」と感じる人がいる。
その違いを受け止めることで、より多くの人にとって意味のある未来を考えることができます。
インクルーシブとは、違いをなくすことではありません。
違いから、新しい可能性をつくることなのです。
未来予報カードが、インクルーシブな対話を助ける理由
インクルーシブな場をつくるには、参加者の違いを安全に話せる道具が必要です。
いきなり「あなたの価値観を話してください」と言われると、答えにくい人もいます。
専門知識がないと発言しにくい。
正しいことを言わなければならない気がする。
自分の意見が浅いと思われるのが不安。
立場上、本音を言いにくい。
こうした心理的な壁は、未来を考える場でもよく起こります。
そこで役立つのが、カードや未来シナリオのような媒介です。

たとえば「未来のコンパス」のようなカードを使うと、参加者は未来に向かうときに自分が大切にしたい価値観や気持ちを選び、それをもとに話すことができます。
これは、知識量や肩書きに関係なく、自分の感覚から未来の対話に参加できる方法です。
「なぜこのカードを選んだのか」
「この価値観は、自分のどんな経験とつながっているのか」
「他の人が選んだカードと、自分の選んだカードはどこが違うのか」
こうした問いを通じて、参加者の違いや共通点が自然に見えてきます。
未来の対話におけるインクルーシブとは、全員に同じ発言量を求めることではありません。
それぞれの人が、自分に合った入口から参加できることです。
カードやシナリオは、その入口を増やすための道具になります。
未来予報®︎の視点:未来は、誰が参加できるかで変わる
未来予報®︎では、未来を一部の専門家が予測するものとしてだけではなく、さまざまな人が自分ごととして考え、対話し、選び取っていくものとして捉えています。
私たちが目指してきたのは、性差や地域、学歴や所得などの“ラベル”が生み出す偏見を越え、人々が自分らしく生きることができる未来に近づくことです。
そのために、未来を当てるのではなく、オルタナティブな未来像を描く。
今の延長線上だけではない未来を想像し、別の選択肢があることを示す。
その未来像を通じて、自分自身の見方や社会の前提を問い直す。
これが、未来予報®︎の大切にしている考え方です。
インクルーシブな未来づくりとは、すべての人の意見をそのまま反映することではありません。
異なる立場の人たちが、未来について考えるプロセスに参加できるようにすることです。
未来について話すとき、誰がその場にいるのか。
誰の経験が反映されているのか。
誰の不安や希望が、まだ言葉になっていないのか。
誰が未来を「自分には関係ないもの」と感じてしまっているのか。
どんなラベルが、その人の可能性を見えにくくしているのか。
こうした問いを持たないまま未来を描くと、その未来は一部の人にとってだけ都合の良いものになってしまうかもしれません。
未来は、誰かが用意した完成図ではありません。
まだ見えていない違いを聞き、まだ参加できていない人に目を向け、まだ名前のない願いをすくい上げながら、ともにつくっていくものです。
未来は、“誰が参加できるか”で変わる。
インクルーシブとは、未来をより多くの人に開いていくための、重要な考え方なのです。
関連する未来予報®︎の記事・ツール
インクルーシブな未来づくりや、共創・対話・まちづくりに関心のある方は、以下の記事やツールも参考にしてみてください。
- 「違和感」こそ、変化の兆し。パナソニック「ふつう研究室」の対話から未来を実装するデザイン
- 未来予測の方法とは?代表的な未来予報のフレームワーク・ツール5選
- 未来予測とは|手法の違いと活用法を整理してみた
- 2030年代の働き方シリーズ
- 未来予報データベース
- 未来予報カード
- 未来予報のワークショップ
