こんにちは、VISIONGRAPH Inc. / 未来予報 Futuristの宮川です。
私が講演でよく話しているテーマのひとつに、「コンセプチュアルシティ」がありますので、今回はこの未来予報について少しお話しさせていただきます。
都市計画やまちづくりのアプローチは、これまでの枠組みを超えて革新に向かって進化しています。特に、私が提案する「コンセプチュアルシティ」というコンセプトは、新たな未来の都市像を描き、現実の技術を活用しながら新しい生活圏をデザインすることを目指しています。
「コンセプチュアルシティ」というアプローチ

都市計画は常に進化し続けていますが、従来のアプローチは、基本的に既存の都市をテクノロジーでアップデートすることが主流でした。しかし、コロナ後の急速な社会変化やテクノロジーの進展を受けて、現在は「ゼロから新しい街を作る」という発想が、見直されてきています。時代によってサイクルが変わりますので、今はその節目だと考えています。これらの都市作り構想は、単なる都市のアップデートではなく、まったく新しい形の都市を創出するものです。
未来予測はデータドリブンで行われることが多いですが、私たちは技術者や起業家・研究者たちが描く未来のビジョンに注目し、ある{かもしれない}を未来予報®︎として多様な可能性を示しています。
私はFuturistとして、多くの方が視野を広げられる未来予報®︎を発信することをミッションにしています。この講演は都市開発の方々にとどまらない業界を超えた勉強会でお話しした内容です。
未来の都市計画─コンセプチュアルシティ
ここで、私が考える「コンセプチュアルシティ」の中で、特に注目している4つのビジョンをお話ししましょう。
4つのビジョンをもとに、ぜひ「自分だったらこの『まち』でどんなことをしたいかな?」と考えてみてください。
デザイン雑誌AXISでも取材いただいたので、読んでいただいた方もいるかもしれません。
1. 彫刻都市 -Sustainable Sculpted City-

このアイデアは、建築用の3Dプリンターを駆使して自由で創造的な形状を持つ都市を作り上げるというものです。ICON 3Dがテキサス州で行っている実験的なまちづくりを参考に、持続可能な素材を用いて、都市全体が彫刻のように美しいデザインを持つ街というものを発想しました。ここには、創造性や環境意識が高い人々が集まり、建物や道路が自由な形状で建造されることが特徴です。また、歩行者の楽しさも重視し、人々が歩くことを楽しむ街作りを目指します。
先進事例:ICON 3D | 3Dプリンター建築のプラットフォーム
2. 接続都市 -Synaptic Sanctuary-

「接続都市」は、コンテナ型の住宅を組み合わせて、多様な世代やライフスタイルに対応したコミュニティを作り出すアイデアです。高齢者と若年層が自然に繋がり、互いに支え合いながら生活する都市を理想としています。ここでは、物理的な接続に留まらず、コミュニティのつながりも自然発生するように設計されています。住民同士が自然に交わり、共に成長していけるような都市作りを目指しています。
3. ニューログリッド都市 -Neuro Grid City-

「ニューログリッド都市」は、AI技術を駆使して都市全体を最適化する都市の形です。AIによる効率的な交通網や物流管理、さらには自動運転車やドローン配送を活用して、都市の動きや物の移動がスムーズに行われるように設計されています。加えて、都市全体をバーチャルな監視ネットワークで管理し、リアルタイムで最適な環境を提供することを目指しています。こうしたテクノロジーを駆使した都市では、「人やものが動くこと」の意味を高次的に考え、より快適で効率的な生活になるよう設計されます。
4. 結界都市 -Smart Shield Metropolis-

「結界都市」は、災害に強い都市作りを目指したコンセプトです。特に地震や洪水といった自然災害に対応するためのシステムが組み込まれています。AIが常に都市の安全を監視し、災害発生時にはAR(拡張現実)を活用して、避難経路や安全な場所をリアルタイムで指示します。これにより、市民は災害時にも冷静に最適な行動を取ることができるようになります。
慣れていない方にとって、真っ白なキャンバスに未来を描くことは難しいので、私はFuturistとして「こんな未来があったら?」というインプットトークをしています。話を聞いてくださった方は、一気に解像度が高い「欲しい未来」が見えてくる、ということを何度も経験しています。
三越伊勢丹のFuture Fashion Expoでは5つの未来のストーリーを描きましたが、この4つのコンセプチュアルシティのビジョンから発想された、みなさんの未来像を見るのが楽しみです。
未来の都市作りへのインスパイアしたいこと
私が提案する「コンセプチュアルシティ」のビジョンは、専門家だけでなく、一般の人々にも大きな影響を与えると考えています。都市計画に関わる専門家にとっては新たな視点を提供し、また市民にとっては「自分たちが住みたい都市」を共に描くきっかけになると、とても嬉しいです。重要なのは、未来の都市作りにおいて最適解を求めることではなく、「こうありたい」というビジョンをまず掲げ、それに向かってどう進むかを考えることです。
ちなみに、コンセプチュアルシティの講演をした時には、北海道の方にも聴講いただきました。その際に、北海道ならこの4つのシティが作りやすいのではないかと感想を頂きました。首都圏よりも、地方の方がコンセプチュアルシティの盛り上がりが強くなりそうな予感がしています。また、地域の町内会や人のつながりのデータ化というトレンドは「未来のまち」という観点で非常に注目しているポイントでもあります。
未来の都市作りは、私たち市民ひとりひとりが手掛けるものです。
そのためには、私たち一人一人がFutures Literacyを身につけながら、クロスセクターで未来を描き、共創していくことが求められています。このような未来を切り拓いていくために、私たち市民はひとりひとりのビジョンを大切にして、小さくても何かしら行動に移していきたいですね。