デジタルツイン × 文化共創など…世界各国の実践から考える”未来のまち”を感じる3つの兆し

未来は「予測=当てるもの」ではなく、「いまを動かす道具」である。
こんな想いから、Futures Literacy Journalでも、世界中から小さな兆しを集め、幅広い方々が自分の未来の選択肢を増やすきっかけになる視点をお届けしています。

今回から新しいシリーズをはじめます。「世界各国の実践から考える、未来のまちを感じる3つの兆し」は、世界各国の取り組みを手がかりに、起こるかもしれない未来のまちのワンシーンを描く試みです。
私たちはこの手法を「未来予報®︎」と名付けています。
予報は外れるかもしれません。けれど、具体的に思い浮かぶ未来のシーンが増えるほど、私たちの視野を広げてくれ、より良い未来に向けた意思決定に繋がってくれます。

それでは、3つの未来予報から、あなたが見てみたい未来のまちの光景を想像してみてください。

①Tangible Placemaking | 住民が触れながらまちづくりをシミュレーションする未来 (デジタルツイン × IoT × プロジェクションマッピング)


まちの公民館にある大きな地図は、積み木のように動かせるようになっている。街路樹を動かすとプロジェクションされている路面温度が下がり、木陰のベンチを移動するような提案がされる。ボタンを押せば自動で提案された配置へと地図の中のオブジェクトが動いていく。触る度に街の可能性は広がり、自分の未来の暮らしを想像ができる。お気に入りの街の配置ができたから保存して市役所へ送信するのもいいでしょう。
この”触れる地図”は日本全国で導入され、「誰1人取り残さない」と謳われた全国各地の住民参加型のまちづくりの対話で活用されるようになった。


ここで描かれている “触れる地図”は、デジタル上ですでに取り組みが始まり出しています。スタートアップAURAは気象をはじめとしたデータをもとに地図と組み合わせて表示する仕組みです。このサービスがプロジェクションマッピングやIoTの教育ツールなどと結びついていくことで、象徴的なまちづくりの道具が生まれ、より市民が自分のまちを自分事になるきっかけになるかもしれませんね。

今後、衛星技術の進展によって、地表の温度や人流データなどがリアルタイムに集まってくることが予測されていますし、それらのデータはどんどんオープンになっていくでしょう。このデータを活用し、地域行政や教育機関が連携することによって、このような市民活動やまちづくりの取り組みが加速することに期待しています。

参考|SXSW2026 Panelpicker®︎ – The City That Plays: Digital Twins Reimagining LA28 & Beyond

②Cultural Corridor | 境界が文化をつなぐ回廊となる未来(文化共創 × まちづくり × モバイルハウス)


移民が多く住むこのエリアの境目の高架下は、夜になると“文化回廊”に変わるんだ。異なる国のリズムとこの街のビートは重なり、古着屋のラックに民族柄と作業着が並ぶ。書店は二つの言語で新刊を紹介し、屋台は混ざった味を出す。昼は子ども向け朗読と青空語学学校、夜はサイレント・ライブ。騒がず、明るい。境界だった線が、厚みを帯びていっていて、今では人が行き交う街の中心地となっている。誰かのふるさとと誰かの日常がここで交わり、次の店や曲や物語が増殖していっている。


壁を建設するプロジェクトが動くアメリカとメキシコの国境。私たちがよく訪れるテキサス州も、メキシコ第2の都市モンテレーと陸路で繋がっています。

そのモンテレーにある未来洞察のプログラムを提供する会社「Polymath」が提案しているワークショップは、国境を文化の境目ではなく、接点としての「文化の回廊」に見立てる未来を一緒に構想しようというものです。

日本でも移民についての議論が加速していますが、すでに多くの街には集積した外国人居住地があります。文化交流イベントはその地域や都市部でも頻繁に行われていますが、イベント・観光的なお祭りごとではなく、境界部分を常設の回廊のような存在に見立て、ある{かもしれない}共生都市を構想してみる試みは、双方にとって非常に有意義となる視点だと思います。

参考|SXSW2026 Panelpicker®︎ – Futuro Frontera: Designing Cross-Border Futures

③Urban Porocity | 高層ビル群の余白をつなげた多孔性都市の誕生(建材新技術 × 人流データ × AI最適化)


高層ビルが並んだ通称 “ヨハク”地区が私の街に誕生した。定められた新しいルールで、開発者やオーナーが異なるビルでも、それぞれが1階部分を開き、緑の中庭でつながる開発が進められた。余白が多いからヨハク地区と言うらしい。通りから奥まで入れて、ベンチと木陰、雨水をためる花壇。生まれた背景としては、建物の床面積を少し増やせる代わりに、誰でも使える余白をつくることを義務付けた独自の政策があったらしい。昼は屋台と休憩、夕方は学童の近道、週末はマルシェに。非常時は避難の通路にもなる。ビルの“穴”がつながって街路の外側にも歩ける自由な場所が、余白として増え続けていく。まるで生物みたいな都市だな。


日本でも、高度成長期に建設された高層ビルの再開発が様々な場所で加速しています。行くたびに風景や通路が変わることに驚いてしまいますよね。これから進む開発は、どのようにして街の余白を作れるのでしょうか。

示唆的な提案がNew Yorkで活動する、建築事務所ODA主宰Eran Chen氏の「Porocity(多孔性)」です。高層ビル群においては、容積率を緩和する代わりに孔=エアーポケットを作る法令を設定することで、高層ビル同士の間をホワイトスペースとして柔軟で自由な公的空間として開こうというものです。

日本では大型の開発を一社のデベロッパーが引き受けることが多いですが、大型開発同士の境界線や、小さな街区同士でも「Porocity(多孔性)」や「つながる余白」を意識するまち全体の設計思想を持つことで、ここで暮らす人々や観光客にとって、楽しくそしてより回遊したくなる都市に変革することができるでしょう。

参考|SXSW2026 Panelpicker®︎ – Designing For Human Connection in Vertical Cities

作り手と使い手が、幸せな関係性へと進化する未来のまちづくり

3つの未来予報に共通することは、作り手(設計側)と使い手(住民)の関係性の変化です。すでに住民参加型で開発が進んでいますが、テクノロジーや社会意識のアップデートによって、未来のまちはもっと面白くなりますね。

あなたはどんな未来のまちに住んでみたいですか?
より良い街をつくるためには、より私たちの街と思えるためには、どのようなものがあれば良いと思いますか。
これを機会に、ぜひ考えてみてもらえると嬉しいです。

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)Panelpicker®︎の仕組み

今回ご紹介した3つの未来予報の発想の起点となっているのは、もともと私たちが日本事務局を担当する海外イベントSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)の公募セッションに今年応募されたプレゼンテーションなんです。
SXSWではPanelpicker®︎という独自のセッション公募の仕組みがあり、3000を超える未来に向けたプレゼンテーションが世界中から集まります。応募されたプレゼンテーションはWEBサイトで一斉に公開され、一般投票・スタッフ投票・専門家投票という3つのプロセスを経て選出されます。
この記事は一般投票の時に公開された、世界各国のプレゼンテーションの中から3つ、面白いものを取り上げました。

Panelpickerは誰でも応募することができるので、有名無名問わずに様々なプレゼンテーションが一箇所に集まります。日本のニュースでも取り上げられるビッグネームの建築家から、学生のアイデアまでがフラットに並んでいるのが面白いところです。
セッションとして採用されるかはまだわかりませんが、それでも世界中から集まった未来をつくる小さな種です。
Futures Literacyを学んでる人にはSXSWというイベントだけでなく、Panelpickerについてもぜひ知って欲しいと思っています。古い動画しかないのですが、Panelpickerのことについて説明している動画もご覧ください!

それでは、次回のシリーズもお楽しみに!

SXSW2025 集中講義

10テーマの2025年の最終情報が学べる未来予報アカデミーの特別動画講座。「まち」の未来も扱っています。

未来予報(株)スタッフ

Futures Literacy Journalを運営するVISIONGRAPH Inc. / 未来予報(株)のスタッフです。

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