サステナブルな都市の未来を構想する
アジア最大級のスタートアップ・カンファレンス
昨年、二度目にしてアジア最大のスタートアップカンファレンスの一つとなった「SusHi Tech Tokyo 2024」。 Sustainable(サステナブル)な都市をHigh Technology(ハイテクノロジー)で実現するため、世界中の人々が集まり、議論し、行動に移す場です。
都市デザインの最前線を見に行ったつもりが、フードテック、アグリテックなど目白押し!
今回はインターンのReo Fujitaが感じたさまざまな兆しをお伝えできればと思います。
どんな企業が多いのか?なんで参加するのか
企業が「SusHi Tech Tokyo」に参加する主な理由は、スタートアップとの連携によるイノベーション創出や、持続可能な都市づくりへの貢献、そしてグローバルなネットワークの構築です。
- スタートアップとの協業・連携の促進 多くの企業は、スタートアップとの協業を通じて新たなビジネスモデルや技術の導入を目指しています。例えば、森ビルは自社のインキュベーション施設を紹介し、スタートアップとの連携を促進しています。
- オープンイノベーションの推進 企業はSusHi Tech Tokyoを通じてオープンイノベーションを推進し、新たなアイデアや技術の導入を図っています。例えば、KDDIは出資先のスタートアップと共にブースを出展し、海外展開の拡大を目指しています。
- グローバルなネットワークの構築 SusHi Tech Tokyoは、世界中のスタートアップや投資家が集まる場であり、企業にとってグローバルなネットワークを構築する絶好の機会です。例えば、Kinstaは公式スポンサーとして参加し、国際的なプレゼンスの向上を図っています。
- 社会課題への取り組みとブランド価値の向上 企業は、持続可能な都市づくりや社会課題の解決に取り組むことで、ブランド価値の向上を目指しています。例えば、UPWARDは、災害後の復旧・復興支援に関する取り組みを紹介し、社会貢献をアピールしています。
このように、企業はSusHi Tech Tokyoへの参加を通じて、スタートアップとの連携、イノベーションの推進、グローバルなネットワークの構築、そして社会課題への取り組みを進めています。これらの活動は、企業の成長やブランド価値の向上に寄与しています。
公式サイト:https://sushitech-startup.metro.tokyo.lg.jp/
いざ、会場へ・・・
東京駅から無料のシャトルバスが出ているので(基本的には20分おき)、バスに乗って会場へ向かいます。シャトルバス乗り場は東京駅八重洲中央口を出て有楽町駅側へ向かって歩きます。一つ目の大きな信号を渡り、少し進むとバス乗り場が出現します。ここまで体感7分程度はかかるでしょう。場所は丸ノ内鍛冶橋駐車場です。
バスに乗ってからは会場まで大体30分ほどです。会場の入り口を案内してくれるので、非常にわかりやすかったです。
受付は5番ホール。ここでチケットについているQRコードを提示すればネックストラップをもらえます。その後に簡易的な手荷物検査が行われます。
会場は各ブースに分かれていて、たまに段差があるので気をつけたいところです。

公式サイトフロアマップ:https://sushitech-startup.metro.tokyo.lg.jp/floormap/
展示会場で気になったもの
まず、目に飛び込んでくるのが大型のパビリオン。まるで盆踊りをするかのような大きさだ。
中では自転車で作るサスティナブルコーヒーの試飲会を行っていました。
GOOD COFFEE FARMS:https://www.goodcoffeefarms.com/
このまま進むと、今話題の自動運転の車が現れます。
最近は空飛ぶクルマやモビリティなどさまざまな言葉が使われていますが、果たしてクルマとは何なのか。何か違う言葉でもいいのではないか。ちょっとした問いも出ました。同時に、自動運転の未来は着々と近づいており、実装は近いと感じました。すでにアメリカのサンフランシスコではビジネスとして成り立っており、一度体験してみたいものです。

ティアフォーは、2023年6月に公開した自動運転EVソリューション「fanfare(ファンファーレ)」のラインナップの1つであるShuttle Bus(シャトルバス)モデルを改良し、2025年までに次世代ロボットタクシー向けの新たな車両モデルとして製品化する予定です。「ファンファーレ」は、ホワイトレーベルの自動運転EVの開発を加速させるソリューションです。ステアリングやブレーキなどの駆動系の電動化モジュールおよびレベル4水準の自動運転機能に対応した電気電子アーキテクチャを開発し、後付けのソフトウェアによってサービス提供時の自動運転機能を定義できる設計になっています。このソリューションを活用することで、ティアフォーは、顧客が自社ブランドを通してレベル4水準の自動運転EVを製品化、販売、利用できるよう支援します。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000066.000040119.html
森ビルは今年開業したグラスロックに関連する展示ブースでした。関連した本の厳選は、未来思考を考える上でどれも興味深かったです。僕自身、未来妄想会議でポストSDGsになりうるもの、社会課題が解決した未来での出来事を妄想する(こうなるかもしれない世界を想像し、今何をすべきかを考える)ことの重要性を再確認したところです。

そして、KDDIからはKDDI Open Innovation Fundのうちの一つ。Idein社のデータを収集・活用できるようにするエッジAIプラットフォーム「Actcast」を見学しました。

テクノロジーなどが好きな私にとっては、新しいものはすぐに体験してみたくなってしまいます。
商品近くに立つと人を感知し、AI搭載のカメラが顧客となり得る人の目線や仕草などのデータを取得。収集したデータを分析することで、売場施策やテナントリーシングに活用可能とのことでした。
次に、ひときわ大きい展示物があります。大きなロボットのようなものはMOVeLOT(ムーヴロット)株式会社の「ヒューマノイドロボット」です。
人生で一度はロボットに乗った経験はありますでしょうか?私は残念ながらありません。
しかし、新たなエンターテイメントの兆しとして、このヒューマノイドロボットはすごく興味深かったです。体験するという意義を感じさせられた展示だったと思います。
搭乗型ロボットのチカラで人の”心”を動かし、
搭乗型ロボット領域における世界的なリーディングカンパニーを目指す。誰でも搭乗型ロボットに搭乗できる/製作できる環境の構築と、搭乗型ロボット技術を用いて、多種多様なロボットが生み出される世界を実現します。
開発者と搭乗者(パイロット)の創出と育成、搭乗型ロボットの企画/開発/運用や既存の搭乗型ロボットのプロデュースなど搭乗型ロボット領域を突き詰めていきます。
https://movelot.co.jp/about



こちらは、組立茶室『匠創庵』外国人を中心にとても注目を集めていたように思える。
広間八畳、小間二畳台目、水屋で構成されたこの茶室は金物は一切使わず伝統的な工法に拘りながらも組立式の新たな工夫も盛り込まれている。
組子細工の壁パネルや江戸小紋の襖壁、47都道府県の透かし彫り、水辺イメージしたモザイクタイルと苔と樹木が生い茂る露地など他にも江戸切子、表具、左官など沢山の職人たちの匠の技と協力があり本格的な組立茶室が完成した。
製作には2カ月かかったが、解体組立は数時間で可能。また広間のみ、小間+水屋のみの使用など用途やスペースによってパーツの組み合わせも含めて変えることができ、様々な表情を見せることができる組立茶室となっていることも大きな特徴のひとつである。
https://titel.jp/architects/tsubaki393/works/634
組み立てに4時間、解体はたったの1時間足らずで出来るそうです。次回は2025年7月25〜27日に行われる「ものづくり匠の技の祭典2025」で組み立てられます。

続いて、山形大学の古川研究室の展示物。食べ物を3Dプリントする「3Dフードプリンタ」で実際に寿司のネタを制作していました。写真は、3Dフードプリンターで「うに」を作っている様子です。
残念ながら実食はできませんでしたが、その味がとても気になりました。今回このようなフードテックとも呼ばれる食×テクノロジーの兆しは他にもありました。
その一つが、オイシイファーム(Oishii Farm)の共同創業者兼CEO・古賀大貴氏のセッションです。
テーマは「日本のディープテックデカコーン戦略 ~グローバル市場で輝く日本の強みとは?~」でした。
Oishii Farm公式サイト:https://oishiifarm.co.jp/
日本の強みでもある「食」を軸にしたイノベーションに焦点をあて、米国拠点でグローバルに活躍しているスタートアップ、フード・アグリ分野のディープテック企業を支援する投資家の対談はとても参考になり、私自身、どのようにデカコーンとなるのか、その可能性に関してはとても参考になりました。
個人的行ってよかったランキング上位に入るセッションでした!

中にはこんな展示物も・・・

写真は、複雑な問題を高速で計算できる世界最大級の量子コンピュータの1/2モデルです。
最近、世界最大の256量子ビットコンピュータの開発というニュースが話題を呼びましたが、今回会場ではその1/4バージョンである64量子コンピュータの1/2モデルが展示されていました。
このような形のコンピュータがどのようにして動くのかはかなり想像力を使いますが、最新の技術を精巧に見学できたこと、そしてぶら下がっているのがなんとも格好よかったです。


最後に紹介するのが伝統技術と最新技術が融合したモビリティ「ツナグルマ」
公式サイト:https://rds-design.jp/lp/tsunaguruma.html
とてもかっこいい山車(だし)がモビリティとなって登場していました。
檜原産の杉を活用し環境負荷を配慮したサステナブルな車体に、人口減少によりお祭り維持が難しくなっている時代の中でも少人数で引けるEVアシストを導入。
伝統をしっかりと継承し、未来へと紡いでいく文化の掛け合わせ「伝統×未来のコラボレーション」をテーマにして制作をしているそうです。文化がテクノロジーと融合するのは個人的には好きです。
文化の継承にも繋がるし、何より進化していく人間社会の中で新たな文化とも成り得る可能性があるからです。
伝統的な和柄のデザインから始まり、波に乗りながら出てくる亀、空を飛んでいる鶴を浮世絵で表現
昔話にある鶴をモチーフにした鶴の恩返しのDANCEシーンや音楽に合わせたモダンなデザインが融合
鶴と亀は過去から未来に向けて、葛藤を抱えながらもタイムスリップ
未来に着くと大波の海、雷を伴う空が出現、自然環境に課題を抱えた未来がそこに
こちらを見つめる緑色の目、それらは自然環境の危機に瀕している動物たち
そんな時、平和の使者である鳳凰が舞い降りる
桜が舞う中綺麗な空を飛ぶ鶴、そこを空飛ぶクルマが通り過ぎる
銀杏が舞う中綺麗な波を泳ぐ亀、その向こうには風力発電
最後にWAO!DANCEを踊るFishboyをはじめとした幸せそうな人々
伝統と未来が融合した東京の未来はポジティブに満ちている
https://rds-design.jp/lp/tsunaguruma.html
全体を通して
今回、初めてSusHi Tech Tokyo 2025を見学し、日本という国が抱える独特の文脈の中から、未来の兆しが確かに芽吹いていることを実感しました。最新テクノロジーの展示といっても、そこにはどこか「懐かしさ」や「身体性」、さらには「風景の記憶」といった、日本独自の感性が静かに息づいていました。
単に未来を予測するのではなく、文化や暮らしの中に溶け込むテクノロジーの形——たとえば、人の営みを支えるインフラとしてのAI、感情や感性に作用するインターフェース、災害や孤独といった課題に寄り添う都市の在り方。そうした取り組みの数々に、「未来は機械がつくるものではなく、人間の価値観とともにつくられるものなのだ」というメッセージを感じました。
テクノロジーが主役ではなく、テクノロジーと文化が共演する“舞台”としての未来が、ここにはありました。
SusHi Tech Tokyo 2025で見つけた数々の「兆し」は、きっとこれからの社会に、小さくても確かな変化をもたらしていくはずです。