主体性とは?創造性とアクティブラーニングから考える未来人材の育て方

「主体性のある人材を育てたい」
「社員にもっと自分ごととして考えてほしい」
「子どもたちに主体的に学ぶ力を身につけてほしい」

人材育成や教育の現場で、「主体性」という言葉はよく使われます。
ここ数年、SXSWをはじめとする英語圏でもトレンドワードになっている「Agency」がこれにあたります。

しかし、主体性とは具体的にどのような力なのでしょうか。
「積極性」や「自主性」とは何が違うのでしょうか。

主体性とは、単に自分から行動することではありません。
自分の意思で問いを持ち、状況を捉え、選択し、行動し、周りを巻き込み進める力のことです。

不確実な時代において、主体性はますます重要になっています。

なぜなら、これからの社会では、決められた答えを早く正確に出す力だけではなく、まだ答えのないテーマに対して、自分なりに問いを立て、他者と関わりながら未来の選択肢をつくる力が求められるからです。

この記事では、主体性とは何か、自主性や積極性との違い、創造性やアクティブラーニングとの関係、そして未来人材を育てるうえでなぜ主体性が重要なのかを、未来予報®︎の視点から解説します。


この記事でわかること

この記事では、以下のようなことを紹介します。

  • 主体性とは何か
  • 主体性・自主性・積極性の違い
  • なぜ不確実な時代に主体性が重要なのか
  • 主体性と創造性・アクティブラーニングの関係
  • 未来像に対して「自分はどう関わりたいか」を考える意味
  • 未来思考を育てる「建築家型」と「考古学型」のアプローチ
  • 企業研修や教育現場で主体性を育てる方法
  • 未来予報®︎の視点から見た「主体性」の意味

主体性とは?

主体性とは、自分の意思や判断にもとづいて、状況に関わり、選択し、行動していく力のことです。

ただ言われたことをこなすのではなく、
「自分は何を大切にしたいのか」
「この状況で何ができるのか」
「どんな未来に関わりたいのか」
を考えながら動く姿勢だと言えます。

主体性がある人は、必ずしも声が大きい人や、常に前に出る人とは限りません
静かに考え、問いを持ち、自分なりの視点で場に関わることも、主体性の表れです

たとえば、会議で誰よりも多く発言する人だけが主体的なのではありません。

まだ言葉になっていない違和感を持ち帰り、後から整理して共有する人。
言われた仕事の背景を考え、よりよい進め方を提案する人。
既存の前提に対して、「そもそもこれは何のためにやるのか」と問い直す人。
他者の意見を受け止めながら、自分の立場を選び取る人。

こうした行動も、主体性のある関わり方です。

主体性とは、自分勝手に動くことではありません。
自分の意思を持ちながら、環境や他者との関係の中で、よりよい選択肢をつくっていく力なのです。


主体性・自主性・積極性の違い

主体性とよく似た言葉に、「自主性」や「積極性」があります。
どれも前向きな行動に関係する言葉ですが、意味は少し異なります。

言葉意味ポイント
自主性決められたことを自分から進んで行う力やるべきことに対して自分から動く
積極性物事に前向きに関わろうとする姿勢行動量や参加姿勢が見えやすい
主体性自分で問いや目的を持ち、判断して行動する力何をすべきか自分で考える

自主性は、すでに目的ややるべきことがある程度決まっている場面で、自分から動く力です。

たとえば、決められた課題に対して、自分から進んで取り組む。
与えられた仕事を、指示を待たずに進める。
これは自主性のある行動です。

積極性は、前向きに参加したり、行動量を増やしたりする姿勢です。
発言する、挑戦する、手を挙げる、新しい場に参加する。
こうした行動は積極性として見えやすいものです。

一方で、主体性は、そもそも何をするべきか、何を大切にするべきかを自分で考える力です。

「この仕事の目的は何か」
「この課題に対して、別の見方はないか」
「自分はこの未来にどう関わりたいのか」
「今の前提をそのまま受け入れてよいのか」

こうした問いを持つことが、主体性につながります。

つまり、主体性は、行動の量ではなく、行動の起点に関わる力です。
自分の外側から与えられた正解に従うのではなく、自分の内側にある問いや価値観から動き出す力だと言えます。


なぜ不確実な時代に主体性が重要なのか

不確実な時代には、あらかじめ決められた正解が通用しにくくなります。

技術の進化、働き方の変化、人口構造の変化、気候変動、価値観の多様化、AIの普及。
社会の前提が揺らぐ中で、企業や個人は何度も選択を迫られます。

そのときに必要なのは、指示を待つ力ではありません。
自分で状況を捉え、問いを立て、行動を選び取る力です。

たとえば、AIが仕事に浸透する未来を考えてみます。

「AIをどう使えば効率化できるか」だけを考えるなら、指示されたツールを学べばよいかもしれません。
しかし本当に重要なのは、AIによって自分の仕事の意味がどう変わるのか、人間が担うべき役割は何か、自分はどんな価値を生み出したいのかを考えることです。

これは、正解を教えてもらうだけでは身につきません。

自分で問いを持つこと。
変化に対して受け身にならないこと。
未来を“自分とは関係のないもの”として眺めるのではなく、自分が関われるものとして捉えること

それが主体性です。

不確実な時代に主体性が重要なのは、未来が外からやってくるものではなく、自分たちの選択や行動によって形づくられていくものだからです。


主体性と創造性・アクティブラーニングの関係

主体性は、創造性やアクティブラーニングとも深く関係しています。

創造性とは、新しい意味や組み合わせ、アイデアを生み出す力です。
しかし、創造性は単に自由に発想すれば生まれるものではありません。

「なぜこれはこうなっているのか」
「別の可能性はないのか」
「自分ならどう考えるか」
という主体的な問いがあるからこそ、創造性は動き出します。

また、アクティブラーニングとは、学習者が受け身で知識を受け取るのではなく、自ら考え、対話し、表現しながら学ぶ方法です。

主体性がないままアクティブラーニングを行っても、形だけのグループワークや発表になってしまうことがあります。

本当に重要なのは、学習者が自分の問いを持ち、他者との違いに触れながら、自分の見方を更新していくことです。

主体性は、創造性を動かすエンジンであり、アクティブラーニングを深い学びに変える土台でもあります。

未来人材育成においても同じです。

未来について知識を得るだけではなく、
「この未来に自分はどう関わりたいのか」
「自分たちの組織は何を選び取るのか」
「まだ見えていない可能性にどう向き合うのか」
を考えることが、主体性を育てる学びになります。


未来像に対して「自分はどう関わりたいか」を考える

主体性は、単に「自分から動く力」ではありません。

不確実な時代における主体性とは、変化をただ受け入れるのではなく、未来の可能性に対して「自分はどう関わりたいか」を考え、言葉にし、行動につなげていく力です。

多くの組織では、経営層や上層部がビジョンやミッションを掲げ、社員に変化を促すという形が取られてきました。
しかし、ビジョンが掲げられていても、それが社員一人ひとりの仕事や価値観とつながっていなければ、行動には結びつきにくいものです。

組織のビジョンは、社員にとって“意味のわからない呪文”や“上層部の絵空事”のように見えてしまうことがあります。
大切なのは、ビジョンをただ理解してもらうことではなく、社員自身が「納得」し、「動きたくなる」状態をつくることです。

そのためには、組織が描く未来像と、個人が感じている未来への関心や違和感を接続する必要があります。

たとえば、未来像に対して次のように問いかけます。

  • 自分はその未来にどう関わりたいか
  • 自分はどんな役割を担いたいか
  • その未来で、自分の強みはどう活かせるか
  • その未来に向けて、どんな価値観が大事になるか
  • 自分の仕事は、その未来とどうつながっているか

こうした問いを通じて、組織のビジョンは「会社が掲げている言葉」から、「自分の意思と重なる領域」へと変わっていきます。

主体性とは、与えられたビジョンに従うことではありません。
組織が描く未来像に対して、自分なりの物語を付け加え、自分の役割や関わり方を見つけていくことです。

未来を“会社のもの”としてではなく、“自分も関われるもの”として捉え直すこと。
そこから、主体的な行動が生まれていきます。


主体性を育てるための3つの視点

主体性は、「もっと主体的になりなさい」と言うだけでは育ちません。

主体性を育てるには、自分の問いを持ち、自分の感覚を言葉にし、行動を選び取る経験が必要です。

ここでは、主体性を育てるための3つの視点を紹介します。


1. 問いを与えるのではなく、問いを育てる

主体性を育てるうえで重要なのは、答えを教えることではなく、問いを育てることです。

多くの教育や研修では、課題が与えられ、その答えを考える形になりがちです。
しかし、主体性は「問いそのもの」に関わる力です。

「何が問題なのか」
「なぜそれを考える必要があるのか」
「自分は何に違和感を持っているのか」
「どんな未来なら関わりたいと思えるのか」

こうした問いを自分で持てるようになることが大切です。

問いを育てるには、すぐに正解を求めすぎない場が必要です。
曖昧な違和感や途中の考えを出せる時間があることで、参加者は自分の内側から問いを立ち上げやすくなります。

主体性は、問いを持つことから始まります。


2. 小さな選択を積み重ねる

主体性は、大きな決断の場面だけで発揮されるものではありません。

日常の小さな選択の積み重ねによって育っていきます。

どの情報に注目するか。
どの問いを深めるか。
誰に話を聞くか。
どんな視点から考えるか。
どのアイデアを試してみるか。

こうした小さな選択を自分で行う経験が、主体性を育てます

逆に、すべての手順や答えがあらかじめ決められている環境では、主体性は育ちにくくなります。

もちろん、完全に自由にすればよいわけではありません。
大切なのは、安心して選べる範囲を設計することです。

選択肢があり、自分で選び、その結果を振り返る。
このサイクルを繰り返すことで、主体性は少しずつ育っていきます。


3. 自分ごと化できる未来に触れる

主体性を育てるには、未来を自分ごととして感じられることも重要です。

未来が遠い話や専門家の話として提示されるだけでは、人は受け身になりがちです。

「AIが進化する」
「人口減少が進む」
「気候変動が深刻化する」
「働き方が変わる」

こうした情報は重要ですが、それだけでは自分の行動につながりにくいことがあります。

未来を自分ごと化するには、そこに自分の仕事や生活、価値観との接点を見つける必要があります。

「この変化は、自分の仕事にどう関わるのか」
「この未来に、自分はどんな不安や期待を感じるのか」
「この未来が広がると、自分は何を選びたいのか」
「自分たちの組織は、どんな役割を担えるのか」

未来を自分の選択肢として捉えられるようになると、人は主体的に考え始めます。

未来は、自分とは関係のない遠い出来事ではありません。
自分の問いや選択を通じて関われるものなのです。


未来思考を育てる2つの方法:建築家型と考古学型

主体性を育てるには、「自分で考えなさい」と促すだけでは不十分です。

未来について考えるための足場や、問いを立てるための型が必要になります。

未来予報®︎では、未来思考を育てるワークショップのアプローチとして、大きく2つの型を使い分けています。
ひとつは 建築家型、もうひとつは 考古学型 です。

建築家型は、兆しマップ(未来年表)や未来予報カードなどを使いながら、自分たちが望ましいと思う未来像を構想していく方法です。

「どんな未来がありえるか」
「自分たちはどんな未来を望むのか」
「その未来に向けて、どんな事業や行動が必要か」

を考えていきます。

これは、未来に向けて自分たちで設計図を描くようなアプローチです。
自分たちなりの未来像を構想したい組織や、未来から逆算して新しい事業やプロジェクトを考えたい場面に向いています。

一方で、考古学型は少し異なります。

考古学型では、あらかじめ仮の未来の世界観やシナリオを提示します。
参加者は、その未来が「良いか悪いか」を判断するだけではなく、
その未来が来るとしたら、自分はどんな態度を取るのか
を考えます。

なぜ、このような方法をとるのでしょうか。

それは、未来を想像するとき、私たちはどうしても現在の自分の価値観や不安に引っ張られるからです。
だからこそ、考古学型では、いったん仮の未来を提示し、その未来の中で自分はどう振る舞うのかを考えます

たとえば、その未来に対して、次のような態度を選ぶことができます。

  • 推進:その未来を加速させ、新しいサービスをつくる側になる
  • 翻訳:新しい価値観を、これまでの社会や組織が理解できる言葉に置き換える
  • 保護:変化によってこぼれ落ちそうな文化や人々を守る
  • 支援:未来をつくろうとしている人を、リソースや技術で支える
  • 逃避:その未来から距離を置き、あえて別の場所で生きる
  • 静観:今はまだ動かず、状況を見極める

ここで重要なのは、どの態度が正しいかではありません。
大切なのは、未来に対して自分の立場を表明してみることです。
未来に対する態度を言葉にすることで、主体性はより具体的になります。

主体性とは、必ずしも未来を自分の思い通りに変えることではありません。
やってくるかもしれない未来に対して、自分はどう関わるのかを選ぶことです。

建築家型は、望ましい未来を描く力を育てます。
考古学型は、提示された未来に対して自分の態度を選ぶ力を育てます。

どちらも、不確実な時代に主体性を育てるための重要なアプローチなのです。

未来予報®︎の未来構想ワークショップの2タイプ分類資料


企業研修や教育現場で主体性を育てるには

企業研修や教育現場で主体性を育てるには、知識を一方的に伝えるだけでは不十分です。

未来予報®︎では、未来起点で組織のビジョンを自分ごと化するために、次のようなステップを重視しています。

1つ目は、未来のことを安心して話せる環境をつくることです。

正解のない未来について発言することに、不安を感じる人もいます。
だからこそ、カードゲームや誰でも楽しみながら参加できるフレームワークを使い、まずは安心して話せる場をつくることが重要です。

未来予報カード「未来のコンパス」|未来に向けて大切にしたい想いを共有するワークショップツール

2つ目は、兆しや事例を通じて視野を広げ、自分たちなりの未来の仮説を描くことです。

専門性が高いほど、日々の業務や業界の常識に視野が閉じやすくなります。
業界内外の先進事例や未来の兆しに触れることで、今の延長線上ではない未来の可能性に目を向けやすくなります

3つ目は、組織と個人の未来像を接合させることです。

自分たちが描いた未来の仮説と、組織が掲げるビジョンを照らし合わせながら、「自分はどう関わりたいか」を言語化する。
そうすることで、ビジョンは与えられた言葉ではなく、自分なりに語れる道具になっていきます。

主体性を育てる研修とは、単に「自分から行動しましょう」と促す場ではありません。
未来を安心して話し、兆しから仮説を描き、組織の未来像と自分の意思を接続する場です。

このプロセスを通じて、参加者は未来を外側から眺めるのではなく、自分の仕事や役割、価値観と結びつけて考えられるようになります。


主体性を阻むもの

主体性が大切だとわかっていても、組織や教育の現場では、主体性が育ちにくい構造が生まれることがあります。

ひとつは、正解を求めすぎる文化です。

常に正しい答えを出すことが求められると、人は自分の問いを出すよりも、期待される答えを探すようになります。

もうひとつは、失敗を許容しにくい環境です。

主体的に行動するには、自分で選び、試し、時にはうまくいかない経験をする必要があります。
しかし、失敗がすぐに評価の低下につながる環境では、人は安全な選択肢だけを選びやすくなります。

さらに、目的が見えないまま行動だけを求められることも、主体性を損ないます。

「主体的に動いてほしい」と言われても、何のために考えるのか、どこまで選んでよいのか、何に関わる余地があるのかが見えなければ、主体的に関わることは難しくなります。

主体性を育てるには、自由を与えるだけでは不十分です。
目的、問い、選択の余地、振り返り、対話の場が必要です。


未来予報®︎の視点:未来を“自分ごと化”する力

未来予報®︎では、未来を「当てる」ことだけを目的にしていません。

未来というフィクションを通じて、今の私たちの前提や価値観を問い直し、まだ見えていない選択肢を考えることを大切にしています。

その意味で、主体性とは、未来を“自分ごと化”する力だと言えます。

未来を聞いて終わるのではなく、
未来を知識として覚えるのでもなく、
未来を自分には関係のない遠い話として眺めるのでもない。

その未来を見たときに、
「自分は何を感じるのか」
「自分たちの組織はどう関わりたいのか」
「何を変え、何を受け継ぎたいのか」
「まだ選んでいない選択肢は何か」
を考え始めること。

それが、未来予報®︎における主体性の意味です。

未来に対する主体性とは、すべてを自分の思い通りに変えられると考えることではありません。

大きな社会の変化は、個人や一つの組織だけで止められるものではないかもしれません。
しかし、その未来にどう関われるのかは選ぶことができます。

未来に対して自分の態度を選ぶこと。
そして、その態度を他者と共有し、対話し、次の行動へとつなげること。

それもまた、主体性の大切なかたちです。

未来思考を持つ人材とは、未来を正しく予測できる人ではありません。

小さな兆しを読み取り、ある{かもしれない}未来を想像し、その未来に対して「自分はどうありたいか」「自分はどう関わりたいか」を考えられる人です。

そして、その問いを個人の中だけに閉じず、チームや組織の中で共有し、対話し、次の行動へとつなげていける人です。

主体性は、個人のやる気だけで生まれるものではありません。
安心して未来を話せる場があり、視野を広げるための兆しがあり、組織のビジョンと個人の思いを接続するプロセスがあることで育っていきます。

未来を“自分ごと化”する力。
それは、組織の変化を待つのではなく、人材から変化を起こしていくための出発点なのです。


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未来予報(株)のワークショップ

企業の経営会議やマーケティング・デザイン・人材育成・チームビルディングから、
学術機関や地域団体の交流など、さまざまなシーンで当社のワークショップを採用頂いています。

ソガコウタロウ

ソガコウタロウ

Futures Literacy Journal 発起人

未来像{HOPE}をつくる専門会社 未来予報株式会社 aka VISIONGRAPH Inc. aka SXSW Japan Office の 共同代表。未来に関わるプロジェクトをデザインしたり、リサーチしたり、未来の予報を作ったりします。 乗り鉄 / キャンプ / サウナ / 音楽 / 旅行 / ヨガ / 家庭菜園 などが趣味ワード。HeとでもTheyとでもお呼びください!

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