シリーズ : 2030年代の働き方 – 「教育とエンターテイメント」

シリーズ2030年代の働き方では、さまざまなテーマでこれから現れる{かもしれない}職業に従事する未来人をご紹介します。この未来予報®︎を見て、未来の世界に思索をめぐらせてください。

テクノロジーと価値観の変化によって、“学び”と“遊び”の境界が静かに溶け始めています。

AIによる個別最適化学習、メタバース空間での授業、ゲームを通じた社会体験、没入型ストーリーテリング…。

かつて教育は“教室の中の営み”であり、エンターテイメントは“消費する娯楽”とされていました。

しかし今では、学びと遊びは交差し、誰もが“つくる側”として未来に関わる時代が始まっています。

そして2036年。教育とエンターテイメントを横断するような、まったく新しい職業が次々に誕生しています。

今回はその中から、「知ること」と「楽しむこと」の境界を軽やかに飛び越える、3人の専門家をご紹介します。

彼らは、“育むこと”と“夢中になること”をかけ合わせながら、人の好奇心と社会の未来をつないでいくプロフェッショナルたちです。

彼らは一体どのようなかたちで、2030年代の教育とエンタメの世界に貢献しているのでしょうか?

子供の異常を「いち早く察知」する専任職:リサーチ教員

アレキサンダー

リサーチ教員

わたしは、幼稚園と小学校を対象にした、子どもの異状を調査する仕事をしています。
身体の機能や習慣的な行動に変わった状態がないかを見極める役割ですね。
身体障がいや発達障がいなどは、親や教諭が気づけない場合がありますし、医療機関
を受診するハードルも高いのが現実です。そのため、わたし達のような専任の教員
がひとりひとりの子どもの様子を定期的に見守ることが重要です。
子どもの抱える障がいを確認するアプリやデバイスを活用して早期に発見。孤立
化を防止します。誰もが劣等感を持たずいきいきと生きられる世界を作りたいです。


「未来の学力? いいえ、“いま”の違和感を見逃さないことです。」

アレキサンダーの仕事は、子どもたちの“見えないサイン”を読み取ること。

彼は、幼稚園や小学校に通う子どもたちの心身の変化を観察し、発達障がいや学習困難、家庭環境に起因するストレスなど、まだ“名前がついていない不安”をいち早く見つけ出します。

使うのは、子どもの行動を記録・分析する専用アプリと、ウェアラブルなセンシングデバイス。AIによってパターン化された「違和感の兆し」は、アレキサンダーの眼差しと重なり、ひとりひとりの子どもへの理解を深めていきます。

彼が関わったプロジェクトでは、

  • いじめによる孤立傾向を早期に可視化し、学級での対話型アクティビティへとつなげた事例
  • 軽度発達障がいの子どもが、得意を活かした“安心できる居場所”を得たケース など、教育の枠を超えたケアと創造の取り組みが積み重ねられています。

「異常を探すんじゃないんです。“違和感”を尊重することから、その子の可能性がひらくんです。」

かつて、教育は“何ができるか”を測るものでした。

いま、教育は“何に気づけるか”を育てる営みへと、静かに生まれ変わろうとしています。

“リサーチする教員”は、知識ではなく“感受性”を支える、新しい教育のフロントラインに立っているのです。

すでにある「リサーチ教員」につながる先進事例

究極の没入感を与える「分岐する映像作品」の脚本をつくる:インタラクティブ脚本家

イザベラ

インタラクティブ脚本家

わたしの仕事は、ひとつのストーリーを分岐させる脚本をつくることです。例えば、
出演者毎の視点での脚本や、訪れる場所に応じて変化するような脚本です。
映画はひとつのお話をじっくり観覧するだけではなくなりました。主人公を変え
たり、行き先を変えたり、観る人の選択次第でお話も変化します。つくり方も
ゲームとの境界が無くなってきましたね。脚本づくりは、もちろんAIと対話しなが
ら進めます。考えなきゃいけないこと、忘れちゃいけないことが沢山あるからね。
私と相棒AIのサリバンは古い映画が好きなので、週末も一緒に映画三昧しています。


「観る? 選ぶ? いいえ、“一緒に旅する”物語を。」

イザベラの仕事は、“分岐する物語”を設計すること。

かつての映画や演劇は、作り手が描いた一つの物語を、受け手がただ“観る”ものでした。でも、いまやストーリーは観客と共に動き出します。

彼女が手がけるのは、参加者の選択によって展開が変わる「インタラクティブ脚本」。

場所、時間、登場人物の視点…同じ物語でも、選ぶ道によって全く異なる世界が広がります。AIアシスタント“サリバン”と共に、イザベラは毎日“誰かの旅路”を設計しています。

イザベラが参加したプロジェクトでは、

  • 修学旅行生が街を歩きながら、歴史と交差する分岐型ストーリーを体験できる都市AR演劇
  • 難民の視点と支援者の視点を切り替えながら学ぶシリアスゲーム教材 など、「物語×行動」のあたらしい表現が生まれています。

「ひとつの正解を伝えるんじゃなくて、たくさんの選択肢の中で“自分はどうしたい?”って問いかけるのが、私の仕事。」

かつて、物語は完成された世界を伝えるものでした。

いま、物語は“未来の選択肢”を体験するインターフェースへと進化しています。

“脚本を書く”という行為は、すでに“社会をつくる”という営みと重なりはじめているのです。。

すでにある「インタラクティブ脚本家」につながる先進事例

・Netflix制作のインタラクティブ映画。視聴者の選択によってストーリーが分岐する構成で、映像体験とゲーム要素が融合。

・二つ目のc-ya-laterrrrはDan Hettによる自伝的インタラクティブ作品。テロ事件で亡くなった兄への想いを、ハイパーテキスト形式で綴った個人的体験作品。

Circa 1948はStan DouglasとNFB(カナダ国立映画委員会)が開発した、インスタレーション兼AR体験。1948年のバンクーバーを体感的に再構成。

体験を届けることで「熱量」あるビジネスを設計する:音楽体験プロデューサー

エマ

音楽体験プロデューサー

わたしの仕事は、音楽を通じた全体験をプロデュースすることです。アーティスト
の音楽を単に届けるだけではなく、ライブやグッズ、時にはアーティストと一緒に、
新しいビジネスを立ち上げます。この前は、アーティストが実現したい音
を追及するために、新しい楽器を作ったり一緒に販売したりしました。
音楽が持つ力は偉大です。メッセージや思想を表現するために愛されてきました。
ただ音楽を聞いてもらうにとどまらず、もっと地域や社会と接点を持ちながら、
より良い世界を作っていきたいと、私も、アーティストも心から思っているんです。


「ただ聴くだけの音楽? いいえ、“暮らしごとプロデュース”です。」

エマの仕事は、“音楽のある体験”をまるごとプロデュースすること。

ライブの演出やグッズ制作はもちろん、アーティストと共に「音楽を届ける空間」そのものを企画する。最近では、街づくりや教育の現場にも関わるようになったそう。

「たとえば、子どもたちが奏でるリズムに合わせて建物の照明が変わる“音の公園”や、地域の風景音を活かした“聴く観光マップ”のような企画も手がけました。」

エマがプロデュースしたプロジェクトには、

  • 音楽フェスの一環として開催された、楽器づくりのワークショップ付き移動式スタジオ
  • 高齢者施設での“人生のプレイリスト”を使った回想セラピーイベント など、音楽が日常やケアの現場と深く結びつく試みが多く含まれています。

「音楽って、演奏や鑑賞にとどまらず、人と人、土地と記憶、感情と行動をつなぐ“橋”なんだと思う。」

かつて、音楽は“聴く文化”でした。

いま、音楽は“つくる・関わる・支える文化”へと進化しています。

“音楽を届ける”という行為は、誰かの感情を揺らすだけでなく、暮らしや社会を少しずつ変えていく、新しい創造のはじまりなのかもしれません。。

すでにある「音楽体験プロデューサー」につながる先進事例

3人の共創によって、ある{かもしれない}2036年のニュース

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📡【2036年4月16日 LEO7s NEWS】

【速報】「共感式カリキュラム」、全国へ拡大:教科書を越えて、心を学ぶ“感性の学校”が制度化へ

2036年4月、文科省と文化庁が共同で発表したのは、新たな学びの枠組み「共感式カリキュラム」の全国導入方針。

この制度では、国語・算数・理科・社会といった既存教科に加えて、「感性」「物語構成」「共創体験」が主要プログラムとして位置づけられる。

教育とエンターテインメントの融合が叫ばれて久しいが、それがついに、制度として社会基盤に組み込まれようとしている。


🧠【心の見守りは、研究者から教室へ】

この大改革の起点となったのは、リサーチ教員アレキサンダーの取り組みだ。

彼が率いるチームは、子どもの微細な変化や心の違和感を捉える“見守りAI”と感情スキャンツールを開発。授業中の表情・反応・発話ログを分析し、個々に寄り添ったケアを可能にした。

「子どもたちが“正解”よりも、“感じる”ことで自分の言葉を見つけていく時間が必要だと思うんです。」

このアプローチは、発達障害・グレーゾーン・家庭内トラウマを抱える子どもたちへの支援強化にも繋がっている。


🎮【教育が「観るもの」から「参加するもの」へ】

制度設計には、インタラクティブ脚本家イザベラの協力も不可欠だった。

彼女は、分岐型ストーリーテリングを活用した「選択する授業シナリオ」を開発。生徒たちは授業の中で主人公を選び、感情移入しながら歴史・倫理・科学などを“体感”していく。

「たとえば、歴史の授業で“敗者側の視点”を生きると、正義ってなんだろう?って自然に問い始めるんです。」

この手法は、映像教育・デジタル教科書・AI教師と組み合わさり、今や教育メディアの主流となっている。


🎧【音楽が「教える」のではなく「響き合う」時代へ】

このカリキュラムに“感情の地図”を添えたのが、音楽体験プロデューサーのエマ

彼女は、日常の音や地域の文化音を素材にした「音のプロジェクト」を教育の現場に導入。子どもたちは“自分の音”を見つけることで、自尊感情を育み、チームでの共創体験を深めていく。

「リズムが揃ったとき、人と人って自然と笑顔になるんです。」

彼女のチームは、若者のメンタルケアやいじめ予防に関しても、音楽による共感の力を活かしたプログラムを開発中。


🏫【コラム:教室は“心の社会”になる】

この「共感式カリキュラム」は、知識の習得だけでなく、“共に感じ、共に創る力”を育む制度だ。

  • アレキサンダーは、「知識の偏差値より、“気づき”の感度が社会を変える」と語る。
  • イザベラは、「教育は観客席から舞台へ。全員が“物語の共同演者”になる時代」と言う。
  • エマは、「音は人をつなぐ。心で学ぶことが、これからの“知”になる」と断言する。

2036年、学校は“感性の交差点”として、知と情が共鳴する場所へと変貌を遂げつつある。


✍️【編集後記】レオ・レオーニ三世

「テストの点数では測れない力がある。」

それは昔から言われてきたことだけれど、ようやくその“言葉にならなかった価値”が、制度として認められる時代がやってきた。

これからの教育は、“何を学ぶか”より、“どう生きるか”を共に問う場なのかもしれない。

あなたがもし、2036年の教室に立つとしたら、何を伝えたいですか?



🎓【未来の教育とエンターテインメントを支える職業たち】

2036年、学びと遊びの境界線は、静かに、しかし確かに編み直されつつあります。

感性の異変を捉えるリサーチ教員・アレキサンダー。

物語の選択肢をデザインするインタラクティブ脚本家・イザベラ。

感情に響く音の空間をつくる音楽体験プロデューサー・エマ。

彼らの仕事は、知識を“教える”ことでも、娯楽を“提供する”ことでもありません。

「どんな気持ちで、誰と、どう学ぶか?」という問いに、テクノロジーと共感で応える仕事です。

寄り添う目。

没入する物語。

響きあう音。

かつて分かれていた教育・芸術・ケアの領域は、いま、重なり合いながら“心の学び舎”をつくりはじめています。

📚【教育も表現も、“関係性”から生まれる時代へ】

この時代の変化は、教科書や授業という「かたちある枠組み」だけでなく、

学びの場に流れる“空気”や“感情の回路”そのものを揺さぶり始めています。

アレキサンダーは「子どもの違和感は、心の小さなSOS。学びは観察と共感から始まる」と語ります。

イザベラは「物語に参加することで、自分の価値観を問いなおせる」と断言します。

エマは「音楽は教えるための道具ではなく、感じ合うための共通言語」だと話します。

知識もエンタメも、もはや“正解を与えるシステム”ではありません。

感じ、選び、響きあう体験が、学びの未来を動かす原動力になるのです。

🧭【あなたは、誰の“気づき”に関わりたいですか?】

アレキサンダーたちは、

「教育=伝達」でも、「エンタメ=消費」でもなく、

“教育とエンターテインメント=共感を育むプロセス”として働き方を更新しています。

2030年代、教室や劇場、音楽ホールは、人と感情が出会いなおす“交差点”となるでしょう。

これからの社会では、こうした“感性と創造のあいだ”に立つ新しい仕事が、

私たちの学び方、感じ方、そして働き方そのものを根底から変えていくはずです。

2036年。あなたは、どんな「心の未来」に関わる仕事をしていたいですか?



楽しみながら未来について考えよう!

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なりきるカード

Reo Fujita

Reo Fujita

VISIONGRAPH Inc. Project Assistant

武蔵野美術大学 造形構想学部 クリエイティブイノベーション学科  高校卒業後、視覚芸術学や哲学、天文学、文化人類学などの一般教養をアメリカで学ぶ。学位取得後、武蔵野美術大学へ広義のデザインを研究しに編入。現在はスペキュラティブデザイン、未来洞察、シナリオプランニングなどを研究中。

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