最近、ニュースや学校の授業で「SDGs」と一緒に「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉を聞くことが増えていませんか?
「なんか意識高そうな言葉だな」「要するに『幸せ』ってことでしょ?」と思うかもしれません。確かに日本語に訳すと「幸福」や「健康」となりますが、実は私たちが普段使っている「ハッピー」という言葉とは、少し意味が違います。
これから先の予測できない世界で、「自分はどうしたいんだっけ?」と迷ったとき、ちょっとした「道しるべ」になってくれるのがウェルビーイングです。それがどんなものなのか、具体的に見ていきましょう。
ウェルビーイングとは?健康や幸福と何が違うの?
ウェルビーイング(Well-being)という言葉は、「Well(よい)」と「Being(状態)」が組み合わさってできています。世界保健機関(WHO)では、これを「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。これだけだと少し難しいですよね。ここでは、似たような言葉である「健康」「ハッピー」、そして「幸福」との違いから、ウェルビーイングの正体に迫ってみましょう。
「健康」との違い…病気じゃない=ウェルビーイング、ではない
「健康」というと、「熱がない」「ケガをしていない」といった体の状態をイメージしますよね。
でもウェルビーイングは、もっと広い意味を持ちます。たとえば、体に持病があったり、ケガをして部活を休んでいたりしても、「今は読書など別のことに挑戦しよう」と心が前向きで、周りの友達や家族との関係が良ければ、その人のウェルビーイングは「高い(良い状態)」と言えます。
「ハッピー」との違い…一瞬の喜びか、長続きする状態か
「ハッピー」は、「テストで100点とれた!」「欲しかったスマホを買ってもらった!」「推しのライブに行けた!」というような、その瞬間の「短期的・一時的な感情」のことです。もちろんこれも大切ですが、ずっとは続きませんよね。
一方ウェルビーイングは、「毎日学校に行くのが何となく楽しい」「将来に向けて頑張りたいことがある」といった、じんわりと続く「持続的・長期的な良い状態」のことを指します。
「幸福」との違い…自分だけの満足か、まわりとのつながりも含めるか
「幸福」という言葉はウェルビーイングに一番似ていますが、少しだけ見ている範囲が違います。「幸福」は、「あー、幸せだな」と自分自身の心が満たされている状態のこと。 一方ウェルビーイングは、自分の心や体のことだけでなく、「家やクラスに自分の安心できる居場所がある」「自分の行動が誰かの役に立っている」といった、まわりの人や社会との「良いつながり」までを含みます。
つまり、「ハッピー」が「やった!」という一瞬の盛り上がり、「幸福」が自分一人の「ホッとする」時間だとすれば、「ウェルビーイング」は、自分やまわりの人を含めて「なんか毎日いい感じだな」という状態が長く続いていること。そんな風にイメージしてみてください。

なぜ今、世界中で「ウェルビーイング」が注目されているの?
では、なぜ今になって国や企業、学校までもが「ウェルビーイングが大事だ!」と言い始めているのでしょうか。以前の記事で、現代は「VUCA(予測不能)」や「BANI(脆くて不安)」の時代だというお話をしました。気候変動、AIの急激な進化、未知の感染症など、昨日までの当たり前が今日には通用しなくなる時代です。
お父さんやお母さんが子どもの頃は、「いい学校に入って、いい会社に入って、たくさんお金を稼げば幸せになれる」という、ある種の「わかりやすい正解のルート」がありました。しかし今は、大企業に入っても安心とは限らず、YouTuberやeスポーツ選手など、昔は存在しなかった職業で活躍する人もいます。
「外側にある正解」がなくなった時代なのです。
世界がどう変化しても、それに振り回されずに自分らしく生き抜くためには、自分自身の内側にある「ブレない軸」や「心と体の健やかさ」が絶対に必要です。だからこそ今、経済的な豊かさ(お金やモノ)よりも、精神的・社会的な豊かさである「ウェルビーイング」が世界中で一番重要なキーワードになっているのです。
「ウェルビーイング」を作る5つの要素「PERMA」
では、どうすればウェルビーイングな状態になれるのでしょうか?
ポジティブ心理学という学問の研究で、ウェルビーイングは主に「5つの要素」から成り立っていることがわかっています。頭文字をとって「PERMA(パーマ)モデル」と呼ばれます。これを、日常に当てはめて見てみましょう。
| 要素(英語) | 意味 | 日常での具体例 |
| Positive Emotion | 前向きな感情 | 「今日の給食おいしかった」「推しの動画を見て笑った」「空がキレイだった」など、日常の小さな喜びや感謝。 |
| Engagement | 没頭・夢中 | 部活、ゲーム、絵を描くこと、プログラミングなど、時間を忘れて「ゾーンに入る」ほど何かに集中している状態。 |
| Relationships | 良い人間関係 | 家族、クラスの友達、部活の仲間、オンラインの友人など、「自分を受け入れてくれる」と思える安心できるつながり。 |
| Meaning | 意味・意義 | 「委員会の仕事がクラスの役に立っている」「困っている下級生を助けた」など、自分の行動が誰かのためになっているという感覚。 |
| Accomplishment | 達成感 | 「解けなかった数学の問題が解けた」「部活でレギュラーになれた」という、目標をクリアした成長の実感。 |
ここで大切なのは、「5つすべてを完璧にする必要はない」ということです。「最近、部活(達成感)はうまくいってないけど、家でゲームに没頭(夢中)できているから大丈夫」など、今の自分にどの要素が足りていて、どれが足りないかを知るためのバロメーターとして使ってみてください。

今日からできる!「ウェルビーイング」を高める方法
ウェルビーイングは、特別な才能やお金がなくても、毎日のちょっとした行動で高めていくことができます。今日からできる3つのアクションを紹介します。
①まずは「土台」作り。スマホを置いてしっかり寝る
一番簡単で、一番効果があるのがこれです。寝不足だと、どんなに楽しいことがあってもイライラしてしまいますよね。心と体はつながっています。夜はスマホを少し早めに手放して、睡眠時間をしっかり確保する。それだけでウェルビーイングは確実に高まります。
②1日1回、意識して「ありがとう」を伝えてみる
消しゴムを拾ってもらったとき、日直の仕事をしてくれた人、いつも美味しい給食を作ってくれる人。「ありがとう」と感謝を伝えることは、言われた相手はもちろん、実は「言った自分自身の心」を一番満たしてくれます。 照れくさければ、心の中でつぶやくだけでもウェルビーイングは高まります。
③1日の終わりに「3つの良いこと」を思い出す
寝る前に、その日あった「良かったこと」を3つ思い浮かべてみてください。「友達と話して楽しかった」「帰り道に猫を見た」「夕飯がハンバーグだった」など、どんなに小さなことでも構いません。これを続けると、脳が自動的に「日常の中のポジティブなこと」を探すようになり、心が豊かな状態になります。
④SNSの「キラキラ」と自分のリアルを比べない
InstagramやTikTokを見ていると、他人のキラキラした投稿ばかりが目に入り、「自分はダメだな」と落ち込むことはありませんか?
SNSに投稿されているのは、その人の「一番ハッピーな瞬間だけ」を切り取ったものです。他人のウェルビーイングと、自分の今の状態を比べる必要は全くありません。「疲れたな」と思ったら、SNSを見るのをやめて自分の好きなことに時間を使うのも、ウェルビーイングを守る大切なスキルです。
ウェルビーイングは「ゴール」ではなく、自分を整える「ヒント」
ウェルビーイングは、「アイテムをゲットしてゲームクリア!」のようなゴールではありません。
学校生活を送っていれば、テストで失敗して落ち込む日も、友達とケンカしてモヤモヤする日もあります。365日ずっと「完璧に良い状態」でいられる人なんていません。
大切なのは、「あ、今の自分、ちょっとウェルビーイングが下がってるな」と気づけること。そして「今日はとりあえず早く寝よう」「週末は好きなゲームに没頭しよう」と、自分を「いい感じ」の状態に少しずつ戻していくことです。
これから先、なんとなくしんどいな、迷うなと思ったときは、ぜひこの「ウェルビーイング」という言葉を思い出して、自分を整えるためのヒントとして使ってみてください。
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