「まちづくり」という言葉は、行政、都市開発、地域活性化、観光、福祉、教育、商業施設、企業の共創プロジェクトなど、さまざまな場面で使われています。
道路や公園を整備すること。
商店街を活性化すること。
地域イベントを企画すること。
住民参加のワークショップを開くこと。
スマートシティのように、データやテクノロジーを使って都市を便利にすること。
どれもまちづくりの一部です。
しかし、これからのまちづくりは、単に建物やインフラを整えることだけではありません。
人々の暮らし、関係性、参加の仕組み、地域の記憶、未来の選択肢を、ともに育てていく営みになりつつあります。
まちとは、建物や道路の集合ではありません。
そこに暮らす人、働く人、訪れる人、活動する人、まだその場所に関わっていない人たちの関係性によって、日々意味を変えていく場所です。
この記事では、まちづくりとは何か、都市計画や地域活性化との違い、市民参加やコミュニティデザインの重要性、そしてFutures Literacyやデジタルツイン、コンセプチュアルシティの視点から考える未来のまちづくりについて解説します。
この記事でわかること
この記事では、以下のようなことを紹介します。
- まちづくりとは何か
- まちづくりと都市計画・地域活性化の違い
- なぜ今、まちづくりにFutures Literacyが必要なのか
- 市民参加・住民参加はどう変わるのか
- コミュニティデザインとは何か
- スマートシティの次に考えたいコンセプチュアルシティという視点
- デジタルツインや“触れる地図”が変える未来のまちづくり
- 未来予報®︎の視点から見た「まちづくり」の意味
まちづくりとは?
まちづくりとは、地域に関わる人たちが、暮らしやすさ、働きやすさ、訪れやすさ、関わりやすさを高めながら、まちの未来をともにつくっていく活動です。
道路、公園、住宅、商業施設、公共空間、交通、福祉、教育、防災、文化、コミュニティ。
まちづくりには、さまざまな要素が関わります。
ただし、まちづくりは「何かを建てること」や「地域をにぎやかにすること」だけではありません。
そこに暮らす人たちが、どんな日常を送りたいのか。
地域にどんな記憶や文化があるのか。
どんな人が参加できていて、どんな人が参加できていないのか。
これからの社会変化の中で、どんな暮らし方や関係性が求められるのか。
こうした問いを持ちながら、場所のあり方を考えていくことが、これからのまちづくりには必要です。
つまり、まちづくりとは、空間を整えることだけではなく、地域の未来を考えるプロセスでもあります。
まちづくりと都市計画・地域活性化の違い
まちづくりと近い言葉に、「都市計画」や「地域活性化」があります。
どれも地域や都市に関わる言葉ですが、少しずつ意味が異なります。
| 言葉 | 主な意味 | ポイント |
|---|---|---|
| 都市計画 | 土地利用、交通、インフラ、建築などを計画的に整えること | 制度・空間・インフラの設計 |
| 地域活性化 | 地域の経済、観光、交流、産業を元気にすること | にぎわいや経済循環の創出 |
| コミュニティデザイン | 人のつながりや参加の仕組みを設計すること | 関係性や活動のデザイン |
| まちづくり | 地域の暮らしや未来を、多様な人とともに育てること | 空間・関係性・未来像を含む総合的な営み |
都市計画は、行政や専門家による制度的・技術的な計画と関係が深い言葉です。
地域活性化は、経済や観光、交流人口の増加などに焦点が当たることが多い言葉です。
一方で、まちづくりは、もう少し広い言葉です。
行政だけでなく、住民、企業、NPO、教育機関、地域の活動者、開発事業者、来街者など、多様な人たちが関わります。
また、ハード整備だけでなく、暮らし方、活動、関係性、文化、未来像の共有まで含みます。
これからのまちづくりでは、「完成した都市を提供する」という考え方だけでは不十分です。
まちは、つくって終わりではなく、使われ、語られ、参加され、更新され続けるものだからです。
なぜ今、まちづくりにFutures Literacyが必要なのか
これからのまちづくりでは、現在のデータや過去の統計だけでなく、複数の未来の可能性を扱う力が必要になります。
人口動態、交通量、土地利用、経済指標、観光客数、空き家率。
これらのデータは、まちを考えるうえでとても重要です。
しかし、それらは主に「これまで」と「いま」を捉えるための情報です。
10年後、20年後に、働き方、移動、家族、ケア、気候、テクノロジー、コミュニティのあり方が変わるとしたら、まちの前提も変わります。
たとえば、リモートワークが当たり前になれば、都心と郊外の関係は変わるかもしれません。
高齢化が進めば、医療や介護だけでなく、移動、交流、買い物、孤独の問題も変化します。
気候変動によって気温や災害リスクが変われば、公共空間や緑地、避難の考え方も変わります。
AIやデジタルツインが普及すれば、都市の管理や市民参加の方法も変わるでしょう。
そこで重要になるのが、Futures Literacyです。
Futures Literacyとは、未来をひとつの予測として当てる力ではなく、複数のありうる未来を想像し、それを現在の意思決定に活かす力です。
まちづくりにおいては、未来を考える力が、行政や専門家だけでなく、住民、企業、活動者、学生、地域に関わる多様な人々に開かれることが重要になります。
未来のまちは、誰かが一方的に決めるものではありません。
さまざまな人が「こんな未来なら関わりたい」「こういう変化には備えたい」「この価値は残したい」と語り合うことで、少しずつ形づくられていくものです。
市民参加・住民参加はどう変わるのか
まちづくりにおいて、市民参加や住民参加は重要なテーマです。
住民説明会、アンケート、ワークショップ、パブリックコメント、地域協議会。
これまでも、まちづくりに住民の声を取り入れるための方法はさまざまに行われてきました。
しかし、これからの市民参加は、「意見を聞く」だけでは足りなくなっていくかもしれません。
なぜなら、まちの未来は、行政や専門家だけでなく、そこに暮らす人たちの想像力や選択と深く関わっているからです。
従来の市民参加では、すでにある計画に対して賛成・反対を表明する形になりがちでした。
もちろん、それも大切です。
しかし、未来のまちづくりでは、計画が固まる前の段階で、住民や企業、活動者が未来の可能性を一緒に考えることが重要になります。
「この地域で、10年後にどんな暮らしがしたいか」
「子どもや高齢者にとって、このまちはどうあるべきか」
「新しいテクノロジーを、まちのどんな課題に使いたいか」
「便利さとプライバシー、効率と余白をどう両立するか」
「誰がこのまちづくりの場に参加できていないか」
こうした問いを、行政や専門家だけでなく、多様な人たちとともに考えること。
それが、これからの市民参加や住民参加の方向性です。
市民参加とは、意見を集めることだけではありません。
未来のまちを、自分ごととして考える人を増やすことでもあります。
コミュニティデザインとは?人の関係性からまちを考える
まちづくりを考えるうえで、コミュニティデザインという視点も重要です。
コミュニティデザインとは、人と人のつながりや、地域に関わる人たちの活動が生まれる仕組みをデザインすることです。
まちは、建物や道路だけで成り立っているわけではありません。
そこには、人の関係性があります。
挨拶を交わす人がいる。
困ったときに相談できる場所がある。
子どもが安心して過ごせる場がある。
高齢者が役割を持てる活動がある。
新しく来た人が地域に関われる入口がある。
企業や行政、活動者が出会い、新しいプロジェクトを始める場がある。
こうした関係性は、自然に生まれることもありますが、意図的に育てることもできます。
コミュニティデザインは、まちを「空間」だけでなく、「関係性」から捉える考え方です。
どんな場所があれば、人は立ち止まるのか。
どんな問いがあれば、異なる人が話し始めるのか。
どんな仕組みがあれば、地域の活動が続いていくのか。
どんな余白があれば、予定していなかった出会いや試みが生まれるのか。
これからのまちづくりでは、ハードを整えるだけでなく、こうした関係性のインフラをつくることがますます重要になります。
スマートシティの次に考えたい「コンセプチュアルシティ」という視点
近年、スマートシティという言葉が広く使われるようになりました。
スマートシティとは、IoT、AI、センサー、データ基盤などのテクノロジーを活用し、都市の課題解決や効率化を目指す都市のあり方です。
交通、エネルギー、防災、医療、行政サービスなど、さまざまな領域でスマートシティの取り組みが進んでいます。
もちろん、スマートシティはこれからのまちづくりにおいて重要です。
しかし、未来のまちを考えるには、都市を便利にするだけでなく、「どんな暮らし方や関係性を生み出したいのか」から考える視点も必要です。
そこで考えたいのが、コンセプチュアルシティという視点です。
コンセプチュアルシティとは、既存の都市をテクノロジーでアップデートするだけでなく、未来の生活圏や価値観そのものを構想する都市の考え方です。
たとえば、次のような問いからまちを考えます。
「移動しなくても人とつながれる時代に、駅前は何のためにあるのか」
「AIが都市運営を支える時代に、人間はどこで意思決定に関わるのか」
「高齢化が進む社会で、まちはケアをどう支えるのか」
「働く場所と暮らす場所の境界が溶けると、住宅や公共空間はどう変わるのか」
「気候変動が進む中で、快適なまちはどんな環境感覚を持つのか」
スマートシティが都市の機能を高度化する視点だとすれば、コンセプチュアルシティは、都市の意味そのものを問い直す視点です。
まちは、効率化されるだけでは十分ではありません。
人が関わりたくなること。
暮らしの選択肢が広がること。
多様な価値観が共存できること。
まだ名前のない生活文化が生まれること。
そうした未来のまちを考えるためには、技術だけではなく、思想やコンセプトが必要になります。
デジタルツインと“触れる地図”が変える未来のまちづくり
未来の市民参加は、説明会で意見を聞く形だけではなく、住民が未来のまちを“触りながら考える”方向へ広がるかもしれません。
たとえば、デジタルツインやIoT、プロジェクションマッピングを組み合わせることで、住民が地図上で街路樹やベンチを動かし、路面温度や人の流れの変化をシミュレーションできるようになる未来が考えられます。
専門的な都市計画の知識がなくても、地図や模型を通じて、まちの未来を触りながら考えられる。
街路樹を増やすと、夏の歩きやすさはどう変わるのか。
ベンチの配置を変えると、高齢者や子どもの居場所はどう変わるのか。
自転車レーンや歩行空間を変えると、まちの回遊性はどう変わるのか。
水辺や広場の使い方を変えると、人の集まり方はどう変わるのか。
こうした“触れる地図”があれば、まちづくりは専門家だけのものではなくなります。
子ども、高齢者、生活者、事業者、行政、専門家が、同じ未来の模型を見ながら対話できるようになる。
これは、まちづくりをよりインクルーシブで、参加しやすいものにする可能性を持っています。
デジタルツインは、単に都市を管理するための技術ではありません。
未来のまちを、住民や関係者が一緒に想像するための道具にもなりえます。
重要なのは、テクノロジーによって市民参加を置き換えることではありません。
テクノロジーによって、より多くの人がまちの未来に関われるようにすることです。
Futuristはまちづくりで何をするのか
未来のまちづくりには、行政、都市計画家、建築家、デザイナー、企業、住民、活動者など、さまざまな人が関わります。
そこに、Futuristという役割が加わることで、まちづくりのプロセスは少し変わります。
Futuristは、未来の正解を知っている人ではありません。
未来をひとつに決める人でもありません。
Futuristの役割は、複数の未来の可能性を見える形にし、人々が未来について考え、対話し、選択できるようにすることです。
まちづくりにおいては、Futuristは次のような役割を担えます。
- 未来の暮らしや価値観の変化を読み解く
- 兆しや先進事例をもとに、未来のまちの仮説を提示する
- 住民や企業が未来を想像しやすいシナリオやペルソナをつくる
- 未来人の視点から、まちの課題や可能性を問い直す
- 行政・企業・住民が対話できる共通言語をつくる
- まちの未来像を、意思決定や活動の道具に変える
未来のまちづくりでは、「何をつくるか」だけでなく、「どんな未来の前提でまちを見るか」が重要になります。
Futuristは、その前提を問い直すための舞台や問いを設計する存在だと言えます。
未来のまちづくりに必要な3つの視点
これからのまちづくりには、さまざまな技術や制度、専門性が必要です。
しかし、その土台として大切なのは、次の3つの視点です。
1. データだけでなく、未来像から考える
まちづくりにおいて、データは重要です。
人口、交通、地価、空き家、商業動向、災害リスク、環境負荷。
こうしたデータは、現状を把握し、課題を見つけるために欠かせません。
しかし、データだけでは、どんなまちを望むのかまでは決まりません。
同じ人口減少というデータを見ても、
「効率的に集約するまち」を目指すのか、
「小さくても豊かな関係性が残るまち」を目指すのか、
「外から人を呼び込むまち」を目指すのか、
「内側にある文化を再発見するまち」を目指すのか、
によって、選ぶべき道は変わります。
未来像とは、データに意味を与えるための視点です。
これからのまちづくりでは、データドリブンで現状を理解しながら、ビジョンドリブンで未来の選択肢を考えることが必要です。
2. 住民を“意見を出す人”ではなく“未来の担い手”として捉える
市民参加や住民参加を考えるとき、住民を単なる意見提供者として扱わないことが大切です。
住民は、アンケートに答える人だけではありません。
説明会で質問する人だけでもありません。
住民は、そのまちの日常を生きている人であり、まちの未来を担う人です。
日々の暮らしの中で感じる違和感。
移動しにくさ。
居場所のなさ。
人とのつながりの変化。
地域に残したい記憶。
次の世代に渡したい風景。
こうした感覚の中には、まちの未来を考えるための重要な手がかりがあります。
未来のまちづくりでは、住民の声を回収するだけでなく、住民自身が未来を考え、語り、試し、関わっていくプロセスをつくることが大切です。
3. 完成形ではなく、更新し続ける仕組みをつくる
まちは、一度つくれば完成するものではありません。
社会の変化とともに、まちの使われ方は変わります。
人の流れ、働き方、家族の形、商業、ケア、文化、気候、テクノロジー。
それらが変われば、まちに求められる役割も変わります。
だからこそ、これからのまちづくりでは、完成形を一度決めるだけではなく、更新し続ける仕組みが必要です。
小さな実験を行う。
住民や企業が使いながらフィードバックする。
データと対話を組み合わせて改善する。
一部の場所を暫定的に使ってみる。
新しい活動が生まれる余白を残す。
まちづくりとは、完成した計画を実行するだけではなく、変化する暮らしに合わせて、まちを育て続けることです。
企業・行政・地域が共創するまちづくり
未来のまちづくりでは、行政だけ、企業だけ、住民だけで解決できる課題は少なくなっています。
行政は制度や公共性の視点を持っています。
企業は技術や事業化、運営の力を持っています。
住民は生活の実感や地域の記憶を持っています。
NPOや地域活動者は、現場の関係性や継続的な活動を支えています。
教育機関や研究機関は、知見や検証の視点を持っています。
それぞれが異なる強みを持っているからこそ、共創が必要になります。
ただし、共創とは、単に多くの人を集めることではありません。
異なる立場の人たちが、同じ未来の問いに向き合い、互いの前提や関心を理解しながら、新しい選択肢をつくっていくことです。
まちづくりにおける共創では、次のような問いが重要になります。
「このまちの未来を、誰と考えるべきか」
「誰の声がまだ入っていないか」
「企業の事業機会と地域の課題はどこで重なるか」
「行政の計画と住民の実感はどこでずれているか」
「今ある活動を、どう次の仕組みにつなげるか」
未来のまちづくりは、都市を設計するだけではありません。
異なる人たちが、未来について話し続けられる関係性を設計することでもあります。
未来予報®︎の視点:未来のまちは、住民の想像力から始まる
未来予報®︎では、未来を「当てる」ものではなく、未来を手がかりにして、今の見方や前提を問い直すものとして捉えています。
まちづくりにおいても同じです。
未来のまちは、誰かが完成図を持ってきて、それを住民に説明するだけではつくれません。
そこに暮らす人、働く人、訪れる人、まだ関わっていない人たちが、それぞれの未来像を持ち寄ることから始まります。
「こんな暮らし方ができたらいい」
「この風景は残したい」
「この不便さは変えたい」
「このまちには、まだこんな可能性がある」
「この未来には、少し違和感がある」
こうした言葉は、すぐに計画や施策になるわけではないかもしれません。
けれど、その中には、まちの未来を考えるための大切な兆しがあります。
未来のまちは、行政や専門家だけが構想するものではありません。
住民の想像力、企業の実装力、行政の制度設計、活動者の実践、Futuristの問いが重なり合うことで、少しずつ立ち上がっていきます。
まちづくりとは、未来の都市を完成させることではありません。
まだ決まっていない未来に対して、誰が、どのように関わるのかを開いていくことです。
未来のまちは、住民の想像力から始まる。
それが、未来予報®︎におけるまちづくりの意味です。
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まちづくりや未来の都市、市民参加、共創に関心のある方は、以下の記事も参考にしてみてください。
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